第16話

複雑な事実
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2019/02/24 03:23
朝倉 沙耶
くすん…ずずっ……!
あーあ、会ってすぐに泣いてしまったなぁ…。

建物と建物の間の狭い道で私は、体育座りでお兄ちゃんを待っていた。

足音が聞こえ…顔を上げると、お兄ちゃんが笑顔で立っていて…手にはなんかの飲み物を持っていた。
拓也兄
ほれ、この世のお茶だ。
朝倉 沙耶
この世って…タナヒのお茶?
拓也兄
…!?…そうだ、上手いよ。
お兄ちゃんは、お茶を私に渡すと、隣に腰を下ろした。

いい匂いがして…見た目もあんまり悪くはなかったが、少しだけ味が心配だった。
朝倉 沙耶
……っ!
思い切って飲んでみると…意外と美味しかった。
朝倉 沙耶
んんっ!美味しっ!
朝倉 沙耶
なんだこれ…麦茶に近いね!
拓也兄
ははっ…そうか麦茶に近いか。
そう言いながら、私の頭をポンポンと撫でた。
拓也兄
お前、身長何センチだよ…
朝倉 沙耶
159cm!!
拓也兄
おー、まだチビやなー!
朝倉 沙耶
はぁ〜!??
朝倉 沙耶
お兄ちゃんは!?
拓也兄
さぁ、測ってないから知らないね
いざ立ってみると高かったから…170cmぐらいはあるのだろう。
拓也兄
なぁ、どうしてここに来たんだ?
拓也兄
何か思い出したのか?
さっきもそう言っていたな…。

お兄ちゃんは、なんか知っている。
私は、飲み物を置いて…正座をしてお兄ちゃんを見つめた。
朝倉 沙耶
何も思い出してない。
拓也兄
……じゃあどうやって来た?
朝倉 沙耶
分かんない。
そう言うと、お兄ちゃんはちょっとがっかりしたように見えた。
朝倉 沙耶
鈴の音がして…気がついたらタナヒに来ていた。
拓也兄
鈴の音…。
朝倉 沙耶
タナヒで時々鳴る鈴の音と同じ。
お兄ちゃんは、目を開いて…こっちを見ると、腕を組んで考え込んだ。
朝倉 沙耶
お兄ちゃん…聞いて。
拓也兄
ん?
朝倉 沙耶
私が知っていること全て話す。今までの事を全て話す。
朝倉 沙耶
だから、お兄ちゃんが知っていることも…全て私に話して。
お兄ちゃんには納得いかないようだ。何か隠したいことでもあるのかー?
朝倉 沙耶
もうあんまりなのは嫌だ。お願い。
拓也兄
しかし…色々と複雑すぎて受け止められないかもしれ…
朝倉 沙耶
覚悟はしている。もう色々と複雑なのは…慣れたよ。
突然意味分からずにこの世にやって来て、

人間だって殺されそうになって…

必死に逃げて…助けを求めて…

もう色々と複雑なのは《慣れた》。
朝倉 沙耶
元の世界に帰りたいの。
私が願うことは、ただ一つ…。

『帰りたい。』
拓也兄
…分かった。少しずつ話すよ。
拓也兄
ただ一つ言っておく。
拓也兄
お前は、普通の…人間じゃないって言うのを覚えとけ。
朝倉 沙耶
…!?
『普通の人間じゃない。』

最初から、衝撃を受ける言葉だった。
拓也兄
それでも聞けるか?
お兄ちゃんの目は、ちょっと悲しそうだった。

……必死に微笑んでいた。
朝倉 沙耶
うん、聞く。
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最初は、私の方から話した。


この世に来てからの出来事。

・リュウに出会って助けてくれたこと。今はリュウと離れてしまい探していること。

・龍に出会ったこと。前、夢も出たこと。龍とは何か関係があると考えていること。

この世の名前は、《タナヒ》というのも龍から教えてもらったこと。

・キョーナと出会ったこと。人間だってバレてしまったこと。
拓也兄
そっか、お前も色々大変だったな。
朝倉 沙耶
ねぇ、私ってよく頑張ったよね…!?
拓也兄
自画自賛かよ…ははっ!
拓也兄
まぁ、よく頑張ったな。
そう言われると…なんだか嬉しかった。
朝倉 沙耶
でしょ〜?
頑張ったかいがあったなぁ。って感じた。
朝倉 沙耶
次は、お兄ちゃんの番!全て話してよね…?
拓也兄
あぁ…分かりましたよ!
顔に巻いていた布を取って…こっちに向きを変えた。

私と同じく…肌は白かった。一体なんでだろうね…。髪の毛は短く切っていた。

この世の物をつけていて…服もこの世の物だった。
その事からずっと…ずっと前からここにいたんだって分かった。

お兄ちゃんは、私より先にここに来ていたんだね。
拓也兄
俺は、お前と5年前別れた後…
拓也兄
1年半まだ地球にいました。
朝倉 沙耶
え、何してたん…
拓也兄
この世に来る方法を探していたんだよ!
1年半も、1人で彷徨っているのを想像すると…ちょっと笑ってしまった。

よくも、警察やらから逃げられたものだ…。


お兄ちゃんは、それに対してちょっと照れていながら『想像すんな!』と怒っていた。
拓也兄
まぁ聞け!
朝倉 沙耶
はいはい…
そんな会話をしてると…兄妹だな。ってふと思った。
拓也兄
そしてようやく行く方法が見つかってここに来た。
朝倉 沙耶
どうやって行けたの!?
拓也兄
まぁ、今度話すよ。長くなるからな…!
朝倉 沙耶
了解。
お兄ちゃんが言うのなら本当に長いのだろう…。
朝倉 沙耶
…で、なんでお兄ちゃんはタナヒに行こうとしたの?
拓也兄
探し人がいるからだよ。
朝倉 沙耶
探し人…?
拓也兄
その人は、お前にも関係がある。
朝倉 沙耶
私も……関係が…
次の瞬間、お兄ちゃんは、真面目な顔になったのだから、ちょっとだけ不安になった。

なんだか…知らなくても良かった事を知ってしまいそうな気がした。
朝倉 沙耶
その人の名前は…?
拓也兄
ラリーナだ。
朝倉 沙耶
ラリーナ?
拓也兄
その人はな……
次の言葉を聞いて、私はますます頭が混乱することになるのだってその時の私は、

思ってさえもなかったー。




















拓也兄
お前と、俺の《お母さん》だ。
朝倉 沙耶
………えっ?
何言っているの?お母さんは、地球に居るんでしょ?

ねぇ…お母さんって…えっ?どういうこと?




ねぇ、何言ってるの?お母さんが二人もいるわけが…ないよね?


私の頭には、優しい顔をしてご飯を作って…笑顔で…
お母さん
おはよう!沙耶!
と言っているお母さんが映った。





でも、お兄ちゃんが思い浮かべているお母さんの顔と、私が思い浮かべているお母さんの顔は、


《違う》ようだー。




《あぁ、本当に色々と複雑なんだね…。》

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