あーあ、会ってすぐに泣いてしまったなぁ…。
建物と建物の間の狭い道で私は、体育座りでお兄ちゃんを待っていた。
足音が聞こえ…顔を上げると、お兄ちゃんが笑顔で立っていて…手にはなんかの飲み物を持っていた。
お兄ちゃんは、お茶を私に渡すと、隣に腰を下ろした。
いい匂いがして…見た目もあんまり悪くはなかったが、少しだけ味が心配だった。
思い切って飲んでみると…意外と美味しかった。
そう言いながら、私の頭をポンポンと撫でた。
いざ立ってみると高かったから…170cmぐらいはあるのだろう。
さっきもそう言っていたな…。
お兄ちゃんは、なんか知っている。
私は、飲み物を置いて…正座をしてお兄ちゃんを見つめた。
そう言うと、お兄ちゃんはちょっとがっかりしたように見えた。
お兄ちゃんは、目を開いて…こっちを見ると、腕を組んで考え込んだ。
お兄ちゃんには納得いかないようだ。何か隠したいことでもあるのかー?
突然意味分からずにこの世にやって来て、
人間だって殺されそうになって…
必死に逃げて…助けを求めて…
もう色々と複雑なのは《慣れた》。
私が願うことは、ただ一つ…。
『帰りたい。』
『普通の人間じゃない。』
最初から、衝撃を受ける言葉だった。
お兄ちゃんの目は、ちょっと悲しそうだった。
……必死に微笑んでいた。
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最初は、私の方から話した。
この世に来てからの出来事。
・リュウに出会って助けてくれたこと。今はリュウと離れてしまい探していること。
・龍に出会ったこと。前、夢も出たこと。龍とは何か関係があると考えていること。
この世の名前は、《タナヒ》というのも龍から教えてもらったこと。
・キョーナと出会ったこと。人間だってバレてしまったこと。
そう言われると…なんだか嬉しかった。
頑張ったかいがあったなぁ。って感じた。
顔に巻いていた布を取って…こっちに向きを変えた。
私と同じく…肌は白かった。一体なんでだろうね…。髪の毛は短く切っていた。
この世の物をつけていて…服もこの世の物だった。
その事からずっと…ずっと前からここにいたんだって分かった。
お兄ちゃんは、私より先にここに来ていたんだね。
1年半も、1人で彷徨っているのを想像すると…ちょっと笑ってしまった。
よくも、警察やらから逃げられたものだ…。
お兄ちゃんは、それに対してちょっと照れていながら『想像すんな!』と怒っていた。
そんな会話をしてると…兄妹だな。ってふと思った。
お兄ちゃんが言うのなら本当に長いのだろう…。
次の瞬間、お兄ちゃんは、真面目な顔になったのだから、ちょっとだけ不安になった。
なんだか…知らなくても良かった事を知ってしまいそうな気がした。
次の言葉を聞いて、私はますます頭が混乱することになるのだってその時の私は、
思ってさえもなかったー。
何言っているの?お母さんは、地球に居るんでしょ?
ねぇ…お母さんって…えっ?どういうこと?
ねぇ、何言ってるの?お母さんが二人もいるわけが…ないよね?
私の頭には、優しい顔をしてご飯を作って…笑顔で…
と言っているお母さんが映った。
でも、お兄ちゃんが思い浮かべているお母さんの顔と、私が思い浮かべているお母さんの顔は、
《違う》ようだー。
《あぁ、本当に色々と複雑なんだね…。》
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!