第9話

恐怖と救い
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2019/01/18 04:14
少しずつ私に近づいてきて目の前に止まる…。
真っ黒で長い髪の毛…。


長いまつ毛…。


高い背に冷たい目…。


嫌な笑顔を浮かべる。
キョーナ
あんた…人間だろう?
唾を飲み込む…。
朝倉 沙耶
ち、違います
次の瞬間私の髪の毛を掴むと、強く引っ張り出した。
朝倉 沙耶
痛っ!
髪の毛を鼻に近づいた。匂いがするのか確かめているのかな…?
キョーナ
ちっ、1歩遅かったかい
朝倉 沙耶
え?
髪の毛を離すとこう言った。
キョーナ
証拠となる人間の匂いがとれている
良かった。匂いは、ちゃんととれているんだ…。

それならバレな…




ドンッ!!!!!


朝倉 沙耶
ひっ!!??
何の音かと思えば…机を蹴った音。
キョーナ
ふざけてるんじゃないわよ?
キョーナ
何様?何をしにここに来たのよ??
朝倉 沙耶
え、えっと……
すぐに答えずにいると……
ドンッ!!!!!



また暴れ出した。
キョーナ
分かってるんだからね!??
キョーナ
あんたは、人間なんだって!!
怖い……怖い………。


どう逃げよう??


どうやったら逃げられるのだろう??

キョーナ
この目…この姿…
キョーナ
話し方!!匂い……この全てが!!!
キョーナ
私を苛立つ邪魔者なのよ…
ドアはどこだ…ドアはどこ??


私は、キョーナの話なんて聞いてなかった。




手に、ドアノブが当たる…。
朝倉 沙耶
(よし…バレずに…)
キョーナ
…っ!!
机にあったナイフを手にすると私に向かって投げてきた。


朝倉 沙耶
え……?
サッ!!
暖かい液体が頬を伝って落ちていく…


はぁはぁはぁ……



ポタっポタっ……




床に赤いのが落ちていく…。


横を見ると、目のすぐそこにナイフがあった。

左手で頬を触る…。



『痛い』



キョーナ
ドアを開けたら…
キョーナ
その瞬間あなたを殺すわよ
私は、なんて馬鹿だ。


何故こんな所に来た?




カツ、カツ、カツ……




近づいてきて…ドアに刺さったナイフをとる…。
私は、震えていて声さえも出なかった。




首に冷たいものが当たる。ナイフだ。

キョーナ
なんでここに来たのよ?
早く答えないと……またなんかされる……。


それなのに口が開かないんだ…。
キョーナ
はぁ、痛い目を合わさないとね…
今度は、左腕に痛みを感じた。
朝倉 沙耶
ひぃっ、ぁぁぁぁぁぁあああ!!!
キョーナ
なんだ、喋られるんじゃないの
早く言わないと……
キョーナ
なんでこの世に来たの?
朝倉 沙耶
それは……私にも…
朝倉 沙耶
分かりません
キョーナ
は?
朝倉 沙耶
私だって…好きで来たんじゃないんです…
納得出来ないのか…理解出来ないのかキョーナは、もっと目を細めた。
キョーナ
どうやって来た?
朝倉 沙耶
鈴の……鈴の音がして
キョーナ
は?馬鹿馬鹿しい…作り話はやめて頂戴?
キョーナは、私から離れて再びソファーに腰をかけた。
チリン……チリン……。


………え?鈴の音?


チリン…チリンチリン…。


朝倉 沙耶
今です!今の音です!
キョーナ
は?今の鈴の音?
朝倉 沙耶
はい!!
そう答えると…キョーナは、ため息をついた。
朝倉 沙耶
この音ってなんか意味あるんです……か?
キョーナ
別にないわよ
朝倉 沙耶
え、じゃ…どうして…
キョーナ
私達も分からないわ。
キョーナ
昼と、夜の12時…どこからがこの鈴の音が鳴るの
さっき鳴ったから…今は、昼の12時…。

キョーナ
それと、あなたがここに来たのなんか関係あるの?
朝倉 沙耶
私も分からな…
キョーナ
分からない、分からない。あんたって!使えないわね!!
やばい、またイラついてしまった…?
キョーナ
どっちみち…あなたには処分しないとね…?
朝倉 沙耶
それだけは……!
………、

ガシャーン!!!


次の瞬間何かの音が響いた。……何!??
朝倉 沙耶
きゃっ!!
キョーナ
何事!??

窓が割れて……誰かが入った??



恐る恐る目を開くと……目の前には……、

朝倉 沙耶
え、……
見覚えのある…姿。


何回か会って…でも実際には会ってなくて…


知っているけど…今初めて会えて……。



目の前には……あの白い龍がいた。



キョーナ
あ、あんたっ!?
「あんた」って……知ってるの……??
そなたには…ちょっとやりすぎましたね
低くて優しい声……。
キョーナ
何言ってるんの?あなたなら分かってくれるんでしょう!?
キョーナ
はい、人間を私によこして!!
しかし、龍は首を振った。
キョーナ
な、なんで……あなたなら…
すまない、キョーナさん
龍は、私の方を見て…こう囁いた。
すまない、遅くなった。背中に乗りなさい。


私は、言われた通りに背中に乗って…ちゃんと掴んだ。



次の瞬間、グイッと割れた窓から外に出て…空へ飛んだ。

後ろからには、キョーナの叫び声が聞こえた。


怖そうで悲しそうな叫び声……。




でも、決して振り返さなかった。



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朝倉 沙耶
や、やっと…あ、会えたね…。
青い空を飛んでいる龍にそっと言った。

綺麗な白い毛で…立派な髭…。



あなたに聞きたいことが沢山あるの。


話したいことも沢山あるの。



ずっとずっと…会いたかった…。


実際にいた……。夢だと思った。



ねえ、あなたならなんか知ってるんでしょう?





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