第6話

覚悟
252
2019/01/18 04:21
『沙耶は、どこなの…!?』
誰かが私の名前を呼んでる…。

私は、そっと目を覚ました。


私は、自分の部屋にいた。
朝倉 沙耶
……え?
戻ってる…!?
朝倉 沙耶
私の部屋だ…
さっきのは夢…?とちょっとほっとでもしたけど…
朝倉 沙耶
あ、リュウにお礼言ってない…
なんとなく胸騒ぎがしたー。
『沙耶…!!』
階段から登る音がする。
朝倉 沙耶
なんだ、朝起こしに来たのかな?
『ちゃんと早く起きたよ、お母さん。』


ドアノブをゆっくり回し、開けてきた。

そこは、半泣きのお母さんがいた。
朝倉 沙耶
なんで泣いてるの?
朝倉 沙耶
あ、あのね!不思議な夢見たの…!
ベッドから立ち上がり…お母さんの方へ近づく…。



お母さんも泣きながらこっちに来る。



《なんで泣いてるんだ…??》





次の瞬間…分かった。その原因が…なんとなく。











手を伸ばす私を通り過ぎてお母さんは、

私の後ろにあるベッドに崩し倒した。


朝倉 沙耶
………え?
お母さん
沙耶…どこにいるの?
お母さんは、顔を俯きながら呟く…。


何言ってるの?ここに居るよ……?
朝倉 沙耶
『ここにいるよ、お母さん』
お母さん
昨日の夜…なんで帰ってこなかったの…?
朝倉 沙耶
『ごめんね、私も分からないんだ。』
お母さん
誘拐されたの?生きてる?
朝倉 沙耶
『生きてるよ……』
お母さんは、顔を上げて私の方へ振り返った。


一瞬、私のことが見えたのか期待したけど…

お母さん
いるわけないよね…
そう言い…まだすすり泣くのだった。


時間は、朝の6時半だった…。


チリン…チリンーー。


あっ、まただ…。

確か…あの時もこの鈴の音がして……!!!


慌てて振り返ると…そこには、昨日見た夢の中の…









白い毛をした龍がいた。


ぽかーんとしている私は、悲しそうな目をしている龍と…ずーっと見つめ合っていた。



そして、聞こえた言葉…。


『ごめんな。』




龍って喋られるの…?

ごめん。ってどういう事?

君がここに連れてきたの?ねぇ……答えてよ…。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

朝倉 沙耶
ん…ん……はっ!!?
見慣れない天井…。

寝慣れないベッドの上に私はいた。


周りを見ると…机に椅子…。



私の部屋じゃない…。


その時…ハッとした。そっか昨日の出来事は本当なんだな…。


ほっぺをつねってみたが痛いので…現実だと認めることにした。



朝倉 沙耶
はぁ……
さっき見た夢は…夢じゃなくて…こっちの世界で本当に起こってる出来事…?


となれば……、こっちの世界と、この世界の時間は同じだと確認は出来た。


こっちも6時半よりちょっと過ぎてるけど…


だいだい時間は、同じだ。




お母さん…心配かけているんだね…。

ごめんね、出来るだけ早く帰ってくるから。


待っててー。









それしても、あの龍は…何だったんだろう?







【カーテンを開ける音】
リュウ
起きたか?
朝倉 沙耶
…はい
リュウ
………。…ほら、タオル
飛んでくるタオルをキャッチすると…

リュウは、すぐカーテンを閉めて

『ご飯だ。』

と言い残して行った。


足音が遠くなる…。






なんでタオル…?





えっ……、私……。
朝倉 沙耶
泣いてるの?
涙が次々と溢れてきて止まらなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


洗面所を教えてもらい、顔を洗うと…


朝ごはんを食べた。


普通に美味しかった。
でも、お母さんの朝ごはんが食べたかった。




リュウ
はい、ここの服。
朝倉 沙耶
ありがとうございます…
昨日たくさん動き回ったからなのか、汚れた制服を…


この世の服に着替えた。



顔を隠せるようにするためなのか…パーカーと、

動きやすいようにちょっと余裕があるズボンだった。

朝倉 沙耶
あの…
リュウは、ソファーに座って何かを飲んでいた。

布団もあったので昨日の夜はここで寝たのだろうか。


朝倉 沙耶
お世話になりました…。
朝倉 沙耶
助かりました、ありがとうございました。
深く顔を下げて、この家から出ていこうとした時…

リュウが口を開いた。
リュウ
言っとくけどさ、
リュウ
ここからお前の世に戻れる方法はないよ。
朝倉 沙耶
……え?
私は、足を止め…振り返る。
リュウ
今までお前のような人間がこの世に紛れてきたことも何回かあったけど…
リュウ
誰も、元の世界に帰れた例はない。
朝倉 沙耶
え、じゃ…ここに来た人間は、どうなったのですか?
朝倉 沙耶
今ここにいるのでs…
リュウ
処分されたよ。
冷たい目で…低い声でそう言って見つめてくる…。
朝倉 沙耶
…嘘でしょう?
辛うじて帰れると希望を持って…頑張ろうと思っていたのに…、


その希望が…一瞬にして消えた。





誰も、元の世界に帰れた例はない だって?
私は、足がふらついて地面にお尻がついた。


それでも、話は続く…。
リュウ
それでも生きるか?
リュウ
希望が消えたので死にます。…か?

『生きるか?』 『死ぬか?』


生きてても帰られない?

ならば死んだ方がいい?




でも死んだら、一生お母さんや、友達…

みんなのことが忘れてしまうかもしれない。




生きててどうなるの??


わかんない…けど…けど……
朝倉 沙耶
私は…!ただ帰りたいだけ…。
リュウ
だからさァ…
朝倉 沙耶
帰る方法がないと言いきれるの?
リュウ
……どういう事だ?
朝倉 沙耶
見つけてないだけであるかもしれない。
朝倉 沙耶
私は、まだ信じてみる…帰れるって!
そうだ…こんなことでサッパリで諦めて死んでしまうなんて、私らしくない。


まだ可能性は、0%じゃない…。


もう少し…頑張ろうよ。
まだ始まったばかりだ。



私は、顔を上げてリュウの目をじっと見つめた。
リュウ
……面倒臭い人だなぁ…
リュウは、そう言い、ちょっとため息をついたが…少しだけ微笑んだ気がした。
リュウ
出かけるぞ
朝倉 沙耶
……え?
どこからか、コートを取り出すと私に向かって差し出した。
リュウ
とりま、生き延びるんだろ?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


明るくなった街は、昨日見た街とちょっと違って見えた。

明るくなったから昨日暗くて見えなかった物も見えてきた。


本当に少しだけ和風みたいな街だった。


それだけで少しだけほっとする。



朝倉 沙耶
今からどこに行くの…?
リュウ
今から行く所は、ちょっと覚悟しといた方が良さそうだな
朝倉 沙耶
え、か、覚悟…!?
突然前に歩いていたリュウが止まるものだから、私はリュウの背中に鼻をぶつけた。
朝倉 沙耶
あ、痛っ
リュウ
今から行く所はな…
リュウ
《赤居温泉》だ。

なんか聞いたことある…。

あ、昨夜、誰かが言っていたな…。


《赤居温泉》に行くのに【覚悟】するってどういうことーー!?


プリ小説オーディオドラマ