第30話

みんなで歩けば怖くない。
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2019/07/21 11:02
この世にもう少し残ると決めてから、少し時がたった。



キョーナ様は、ラリーナと共に久しぶりに人々の前に顔を出した。

珍しいことでみんな騒いでいた。

城のベランダから、キョーナ様はゆっくりと語りだした。
キョーナ
みんな、聞いてくれ…。
キョーナ
今までの私は間違っていた。本当にすまない。
キョーナ
ラリーナにもみんなにも悪いことをした。
キョーナ
許してくれとは言わない。しかし…お願いだ。
隣にいるラリーナも、下から暖かく見守る私達も…

驚いた目で見るみんなも…じっと声をすませていた。
キョーナ
今度こそ、理想の世界に創り上げてみせる。私にもう一度チャンスをください。
キョーナ様は、みんなの前で頭を下げた。

続けてラリーナも、お願いします。と言い…頭を下げた。
店の人
え、なんだなんだ
人々
頭下げてるよ…!!
人々
どうしよ…、キョーナ様が謝ってくるとは意外で…
騒ぐ中、1人の女の人が叫んだ。

頭を下がり続ける2人に。



その人は、私が知っている人だった。大好きな友達だった。
ナナ
頭をあげてください!!!
ボロボロな私を助けてくれて、働く場を…寝る場を与えてくれた人。

太陽みたいな笑顔が印象的な人。
ナナ
私は……許します!!
ナナ
もう一度信じます!!だから、お願いします!!
ナナ
優しくて暖かい世の中に戻してください!!
遠くで叫ぶナナを私は、驚きながら見ていた。

キョーナ様も、顔を上げてちゃんとナナの言葉を受け止めていた。
ナナは、両手をぎゅっと握りしめるとまた口を開いた。
ナナ
もう1つ…それを言ったらみんな引くかもしれないけど…
ナナ
もう…《人間》を殺さないでください!
ナナ
その中に私の友達も含まれているんです!まだこの世にいるかもしれないんです!
ナナ
本当に優しくて…明るくて…真っ直ぐなんです!
ナナ
悪い人じゃないんです!!
私のことだとすぐに分かった。

そんなに私のことを大切に思ってくれているなん…嬉しかった。
人々
でも…人間ってあれだよね、
人々
前、攻めてきたし…
周りはそうすぐに受け止められない状態だった。

それでもいい…1歩ずつ、いつか仲良くなれたらいいな。




私は走った。ナナの方へ。






ナナは、こっちに振り返る。









そして、驚いた目をする。








私は、手を広げる。










ナナも、泣き笑いながら私を受け止めた。









私は、強く…抱きしめた。








そんな状態を少しの間見つめてからキョーナ様は、口を開いた。
キョーナ
…ありがとう、信じると言ってくれて…
キョーナ
言ってくれた、《人間》に関しては
キョーナ
もう殺しません、私が間違っていました。
キョーナ
悪い人ばかりじゃないと…分かりましたので…!
ナナ
ほんと、…本当ですか!?
ナナ
ありがとうございます!!
頭を下げるナナ。私も頭を下げた。


その姿や、会話を見て人々も少しだけ納得出来たのだろうか。

1人が拍手した。それに続けてもう1人が拍手した。

だんだんそれは大きくなって気がつけば、みんな笑顔で拍手していた。

…大丈夫。きっとこの世は優しくて暖かい世界になる。
《夜》

私達は、丸く囲みながら座って何気ない話をした。

多分、その日がこの世での《最後の夜》になる。
朝倉 沙耶
良かったですね…!
キョーナ
うん、まだまだだけど…頑張るよ…!
朝倉 沙耶
うん!応援してます!
拓也兄
なぁ〜ちょっと話変わるんだけどさぁ
ラリーナ
ん?
お兄ちゃんは、顎に指を当てて顔をかしげる。
拓也兄
ラリーナお母さんさぁ、時計塔にいた時外出られなかったじゃん?
ラリーナ
そうよ…!
朝倉 沙耶
となれば…ご飯とかどうしてたの!?
拓也兄
そうだ!そうなんだよ!
ラリーナ
あー、その事なら実はね…
目を輝かせてその話を耳をすませる私達を見ると、ラリーナお母さんは静かに笑った。

そして、リュウを笑顔で見ながら言った。
ラリーナ
リュウが毎日…食べ物を持ってきてくれたのよ。
朝倉 沙耶
リュウが?
みんな、リュウを見つめるとリュウは恥ずかしそうに俯いた。
リュウ
言わないでください。って言ったんじゃないですか…///
キョーナ
でも、私は知られてよかった。
リュウ…ありがとう。
朝倉 沙耶
私からもありがとう!
ラリーナ
私からも改めてありがとう
リュウは、どういたしまして。と笑顔で言った。

その後もたくさん話をした。笑いあった。泣きあった。真剣な話もした。

その夜はとても長く感じた。



そして、別れの時がきた。お兄ちゃんは、目で私を見てくる。

私は、うん、もういいよ。と頷く。
拓也兄
…あのさ、話があるんだ。
みんな、振り返っては「なに〜?」とたずねる。
ラリーナ
どうしたの?
拓也兄
一応、僕と沙耶は地球で生まれた《人間》だ。
拓也兄
そして、《地球》には僕達の帰りを待っているお母さんがいる。
言った瞬間、ラリーナお母さんが1番悲しそうな目をした。

分かってた。分かっているけど寂しいという顔だった。







拓也兄
そろそろ《地球》に帰らないといけない。





そう言った瞬間、ちょっと冷たい風が私たちの間を吹いて行った。




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