あなたは小さな祠の前にいた
あなたは立ち上がり制服の土を払った
あなたは鞄を持ち歩き始めた
家へ戻るとお母さんはキッチンにいた
母親
「おかえり」
母親に普段通り挨拶をし、部屋へと向かった
胸の辺りに痣が出来ていることに気づいた
夜ご飯になり、父親、母親と共にテーブルを囲った
父親
「ん?どうした」
父親
「祠?」
母親
「あら?それって周りが木に囲まれて真ん中に祠がある所の事?」
母親
「それは確か私たちの先祖の方が建てたものよ」
母親
「えぇ。立てたのはうちだけど他の方もお祈りに来るから移動はしなかったの」
母親
「あなたのひぃおばあちゃんは毎日、お祈りをしに行っていたわ」
母親
「おばあちゃんに連れて行ってもらってたからね」
母親
「貴方の名前はひぃおばあちゃんに付けてもらったのよ」
母親
「えぇ。ひぃおばあちゃんが死に間際に迷わずつけてくれたわ」
母親
「どうしてその名前をつけたのかも知れずに亡くなってしまったわ」
母親
「でも何か意味があるのだと私は思うの」
父親
「父さんもすきだぞ」
部屋へと戻りゆっくりと過ごしていた
時計を見ると既に0時をまわっていた
明かりを消し、ゆっくりと瞳を閉じた
END
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!