地下アイドルが好きなのは知ってたけど、
まさかあの子だとは思ってなかった。
何か落ちてる。
見ると、それはチケットに見えた。
橋本にゃー…この名前、どっかで…?
…ヒマだし、行ってみるか、握手会。
そんな軽い気持ちで、行ってみることにした。
ーーー
………きっつ…
なに?なんでこんな行列なの?
これもはや地下アイドルの握手会のレベル
余裕で飛び越えてるよね?
そう一人で呟くと、周りの視線が集まった
気がした。
………刺さるように痛い。
突き刺さる視線に耐えていると、
いつのまにかもう前は10人ほどになっていた。
人は嫌なことがあると、時間が早く
感じられるらしい。
少し小太りな男だった。
と言って、橋本にゃーだっけ?は嫌がりも
せず、男の手を握り返した。
…といっても、猫の手型の手袋の上から
だけれど。
人生の中でこれほど苦労したのは、
初めてかもしれない。
ついに、俺の番がきた。
…………やっべ、可愛い。
そういえば、生で顔を見たのはこれが
初めてかも。
ライブを遠目で見たときは、モニターに映った顔しか見ていなかったから。
やっぱアイドルなんだなぁ…
そう言って、彼女は手をぎゅっと握ってくれた。
やっぱり、アイドルの握手会は手袋越しでも
良いものらしい。
少し照れるけど、彼女に触れられたのは
やっぱり嬉しい。
チョロ松が虜になるのも、わかる気がする。
手にはまだ、彼女の手の感触が残っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。