第1話
キッカケ
隣では友達の村中美優がいつもの調子でぺらぺらと何かを喋っている。
頬杖を付きながら、私、滝口結愛はぼんやりと窓の外を眺めていた。
こうやって2人でバカやってる時が本当に楽しい。
美優とこんな仲良くなったのは確か、中学生になって同じクラスに可愛い子がいる!!って思って私が声を掛けたのが始まりだったはず。
そっから今年も偶然同じクラスになれでずっと一緒にいるんだよね。
あ、そういえさっきぽや〜っとしてて聞き逃したことがあったよな
は……流行り…?!それを流行りと言うのか。
というかそんなことが流行ってるなんて…
全然知らなかったな。さすが情報通の美優だ。
美優がこれでもかというほど大きい声で叫ぶ。
我ながらナイスツッコミだと思ったけどそれもスルーされて美優は私に早口でまくし立てる。
そして少し静かになったかと思うといきなり私の手をとって教室を出た。
美優が指さした先には2年2組と書かれた教室で楽しそうに喋っている水川くんという人やらがいた。
美優は嬉しそうにばしばしと私の背中を叩く。
水川くんは以前、イケメンが居るから見て欲しいと友達に言われて一緒に見に行ってものの、(え…そんなイケメンじゃなくない?)と思ったのを覚えてる。
我ながら失礼なことを思ったと思う。
伊藤くんは2年2組の教室の端で何やら必死にシャーペンを動かしている。勉強中だろうか。
しかしあれのどこがイケメンなんだろう…
面食いの私にとってはさっぱり分からず思わず
と、呟いてしまったのである。
適当に消去法で選んだ水川くんだったし、それがまさか恋のキッカケになるとも知らず、隣で「えっ!結愛は水川くん派なのか!!うおお!私は断然伊藤くんなんだけどな!うふ!」と叫んでいる美優を苦笑いでみつめているだけだった。