第2話

2話 重症者になんてこといいやがる
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2026/08/04 14:34 更新
 
 次に目が覚めたとき、あなたがいたのは病院だった。どうやら、怪我の程度がだいぶ酷かったらしい…。





目が覚めてすぐだが、三回のノック音が響いた。

少しの間のあと、部屋の扉が開く。……誰か入ってきた。ナースさんだろうか…?



???
あ、どうも。失礼してます
めっちゃ現在進行形の「失礼します」だ。
痛む部位をかばいながらゆっくりと体を起こす。

……クラスメートだ。多分。あまり関わりはないのだが…。
あなた
……あ…あの…
あなた
あなたは誰…?
イギリスさん
私はイギリスです。貴方のクラスメートですね。よろしくお願いします
あなた
え…えっと、よろしくお願いします…
イギリスさん
具合は大丈夫そうですか?
あなた
………えっと…はい
実を言うと、あまり大丈夫ではない。打撲痕は痛むし、起き上がっているのもキツイ。それに、少し熱があるようで気持ちが悪い。
イギリスさん
今露骨に目をそらしましたけど、大丈夫というていで進めさせていただきますね
「寝てていいよ」とかは言わないらしい。気遣いはしない主義の方?まぁ、本人の考えを尊重しているといえば聞こえは良いが…。
イギリスさん
何があったんですか?あの教室で
あなた
………
あなたは目を伏せた。

……あまり、言いたくない。思い出したくない。


黙ってしまったあなたを見て、イギリスはあいかわらず淡々と言う。
イギリスさん
いえ、これは正直聞いてもそんな意味ないからいいでしょう。過去より今に目を向けるべきですからね
イギリスさん
とりあえず、貴方を殴ったのはあの2人ですね?


小さく頷く。


イギリスさん
そうですか。彼らとはどんな関係で?
あなた
……クラスメート、です
イギリスさん
そうですか。……まったく全貌が見えてきませんね。この調子の一問一答は効率が悪そうです
イギリスさん
貴方が元気になったときにまた来ますね
イギリスさん
お大事に


嵐のように現れ、嵐のように去っていった。全然お見舞いとかではなく、事情聴取のための訪問だったらしい。




あなた
……あ

ありがとう、と言い忘れてしまった。空き教室で助けてくれたのはおそらく彼だというのに。

次も来るらしいから、そのときに言おう。









入院して二日目の夕方。あなたはすでに結構回復に向かっていた。
あなた
(…健康に丈夫に産んでくれて、ありがとね。お母さん)
ずっと前に事故であっさりと死んでしまった母。面白くて、優しくて…大好きだったなぁ。


そうしみじみと思い出しているときに、回想を破壊するかのように元気よく扉が開いた。

イギリスさん
はい、失礼しまーす


ついにノックすらなくなったか…。ついにというか、2回目なんだけどな。
イギリスさん
…だいぶ回復していますね。え、貴方人間ですか?
あなた
失礼な…
イギリスさん
すみません。それで
イギリスさん
聞かせていただけますか?昨日の続きです
イギリスさん
今回の件の全貌を語ってください
あなた
……
イギリスさん
だんまりですか。カツ丼でも食べます?
取り調べか。
イギリスさん
実はそう言うと思って作ってきたんですよ
言ってないですけど。
あなた
……えぇ…?

イギリスはセールスマンのごとく、こちらに喋る間も与えずに袋からカツ丼を取り出した。


しかし、そのカツ丼を見て更に絶句。



あなた
か…カツ丼……?
あなた
あの、お肉に衣をつけたやつですよね…?
イギリスさん
はい。一部衣が剥げていますが
どっからどう見たって一部どころじゃない大惨事。というか衣がどれなのかもわからない。これ、揚げたんじゃなくて焼いたんじゃないだろうか……?
イギリスさん
「揚げ焼き」と書いていたので、フライパンに材料ブチ込んで焼きあげました。少々黒いのはご愛嬌ですね
どうやらこの男、少々の意味がまるでわかっていない。材料が可哀想だ。材料に謝れ。こんなのカツ丼…いや、全料理への冒涜でしかない。てか「焼きあげる」ではなく「揚げ焼き」だ。
イギリスさん
……あ、要らない?んな嫌そうな顔しないでください。傷つつきますよ
よく見てほしい。「傷つきますよ」とかではなく、「傷つつきますよ」である。重症患者にこの発言。ブリカスの名に恥じない働きだ。
あなた
やめてください…
イギリスさん
ま、カツ丼は一旦置いておきましょう
イギリスはカツ丼と形容していいのかわからないソレを、近くの机に置いた。
イギリスさん
さぁ白状しなさい
あなた
……
あなた
………わかりましたよ…
根負けして、今までの経緯を話した。













イギリスさん
……なるほど。なぜかは知らないが、急にブリ子さんに敵視されて、最終的にボロ雑巾にされたと
あなた
ボロ雑巾って……言い方…
イギリスさん
Sorry
あなた
毎回謝罪が軽すぎますよ
あなた
と…友達なくしますよ?
イギリスさん
友達…?
イギリスさん
………あー、いましたね。そんな存在
めっちゃ顔をそらしている。もう手遅れだったらしい。なんか…ごめんなさい。
イギリスさん
そ、そんな話はいいじゃないですか
 
イギリスさん
これから、どうするんです?貴方は
 


あなた
……!


これからどうする?

目を背けたいが、これはいずれ向き合わなければいけない問題だ。

学校では味方は一人もいない状態で、更にブリ子のコミュニティからの………イジメとか、受けると思う。
あなた
………

震えているのが自分でもわかった。

イギリスさん
カイロいります?
そういう震えではない!!!どう考えたって!!
イギリスさん
冗談です


イギリスさん
そうですねー……。しばらく学校に行かないっていうのも手ですよ
イギリスさん
多分ここではいじめっ子の家凸襲撃イベントとかはありませんし…
zetaか。
なんでそんなの知ってるんですかイギリスさん。
イギリスさん
ま、誰に言われようが最終決定は貴方自身でよーく考えて決めてください。貴方の人生ですから
それだけ言って、イギリスは帰った。
……このカツ丼モドキ、どうしよう…。







学校、かぁ……。

あなた
………これからどうしよう




つぶやいたときだった。…電話だ。父から。

あなた
は、はい…もしもし

「お前なぁ……!」





「父さんに迷惑かけるな、親不孝者が!!」




あなた
………っ
息が詰まった。

親にまで味方してもらえないなんて。
…お父さんは母が死んでからだいぶ変わってしまった。


しかし勇気を出して、言ってみる。
あなた
……お父さん。私、明日学校は…




「行かない、と?」




「…そんなこと、よく言えたな」

「こっちは学費払ってんだぞ。休ませるわけないだろ」




「全く、入院費だって払っているのに…」という悪態が、電話の奥で小さく聞こえた。



あなた
………そう…だよね
あなた
…ごめんなさい…

静かな病室内。震える声であなたはそう言った。

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