次に目が覚めたとき、あなたがいたのは病院だった。どうやら、怪我の程度がだいぶ酷かったらしい…。
目が覚めてすぐだが、三回のノック音が響いた。
少しの間のあと、部屋の扉が開く。……誰か入ってきた。ナースさんだろうか…?
めっちゃ現在進行形の「失礼します」だ。
痛む部位をかばいながらゆっくりと体を起こす。
……クラスメートだ。多分。あまり関わりはないのだが…。
実を言うと、あまり大丈夫ではない。打撲痕は痛むし、起き上がっているのもキツイ。それに、少し熱があるようで気持ちが悪い。
「寝てていいよ」とかは言わないらしい。気遣いはしない主義の方?まぁ、本人の考えを尊重しているといえば聞こえは良いが…。
あなたは目を伏せた。
……あまり、言いたくない。思い出したくない。
黙ってしまったあなたを見て、イギリスはあいかわらず淡々と言う。
小さく頷く。
嵐のように現れ、嵐のように去っていった。全然お見舞いとかではなく、事情聴取のための訪問だったらしい。
ありがとう、と言い忘れてしまった。空き教室で助けてくれたのはおそらく彼だというのに。
次も来るらしいから、そのときに言おう。
入院して二日目の夕方。あなたはすでに結構回復に向かっていた。
ずっと前に事故であっさりと死んでしまった母。面白くて、優しくて…大好きだったなぁ。
そうしみじみと思い出しているときに、回想を破壊するかのように元気よく扉が開いた。
ついにノックすらなくなったか…。ついにというか、2回目なんだけどな。
取り調べか。
言ってないですけど。
イギリスはセールスマンのごとく、こちらに喋る間も与えずに袋からカツ丼を取り出した。
しかし、そのカツ丼を見て更に絶句。
どっからどう見たって一部どころじゃない大惨事。というか衣がどれなのかもわからない。これ、揚げたんじゃなくて焼いたんじゃないだろうか……?
どうやらこの男、少々の意味がまるでわかっていない。材料が可哀想だ。材料に謝れ。こんなのカツ丼…いや、全料理への冒涜でしかない。てか「焼きあげる」ではなく「揚げ焼き」だ。
よく見てほしい。「傷つきますよ」とかではなく、「傷つつきますよ」である。重症患者にこの発言。ブリカスの名に恥じない働きだ。
イギリスはカツ丼と形容していいのかわからないソレを、近くの机に置いた。
根負けして、今までの経緯を話した。
めっちゃ顔をそらしている。もう手遅れだったらしい。なんか…ごめんなさい。
これからどうする?
目を背けたいが、これはいずれ向き合わなければいけない問題だ。
学校では味方は一人もいない状態で、更にブリ子のコミュニティからの………イジメとか、受けると思う。
震えているのが自分でもわかった。
そういう震えではない!!!どう考えたって!!
zetaか。
なんでそんなの知ってるんですかイギリスさん。
それだけ言って、イギリスは帰った。
……このカツ丼モドキ、どうしよう…。
学校、かぁ……。
つぶやいたときだった。…電話だ。父から。
「お前なぁ……!」
「父さんに迷惑かけるな、親不孝者が!!」
息が詰まった。
親にまで味方してもらえないなんて。
…お父さんは母が死んでからだいぶ変わってしまった。
しかし勇気を出して、言ってみる。
「行かない、と?」
「…そんなこと、よく言えたな」
「こっちは学費払ってんだぞ。休ませるわけないだろ」
「全く、入院費だって払っているのに…」という悪態が、電話の奥で小さく聞こえた。
静かな病室内。震える声であなたはそう言った。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。