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第1話

1話・プロローグ なんだコイツ
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2026/08/04 11:48 更新
 
ブリ子
きゃああっ!

教室に悲鳴が響き渡る。
大げさに倒れた女子生徒───ブリ子は、私を見上げてガタガタと震え始めた。涙目で。

そして、静まった教室中に響く声で言った。

ブリ子
そ…そんなっ!なんでそんなことするの…っ?
 
ブリ子
───あなたさん…っ!
 


あなた
………え……?



この日が、この瞬間が、絶望の始まりだった。








クラスメート
なぁ、コイツどうすればいい?
 空き教室。教師の目が届かないところで。水浸しで、打撲痕だらけのあなたの胸ぐらをつかみ上げて、屈強な男子クラスメートは言った。
ブリ子
ふぇ………ええと……っ
ブリ子
……どうしよう……私がなにか変なこと言ったら、あとでなにされるか…っ!


あなたは涙も枯れ果てた目で力なくブリ子を見るが、ブリ子はこちらに目も向けようとしない。



ドゴッ!!と、勢いよくみぞおちのあたりを殴られる。あなたは激しく咳込んだ。
あなた
ッか…っは………!!
あなた
……ケホッ……ゴホ……ッ!!
クラスメート
何見てんだよ…
クラスメート
お前、ブリ子に何をした……!!?あんなに彼女が憔悴するまで、何をやったのか聞いてんだよ!!!


 さらに追撃を加えられて、意識が飛びそうになった。
力加減をわかっていない……というより、感情に任せて力加減なんてしていないのだろう。

ブリ子
あっ…。も、もういいよ…っ!
ブリ子
可哀想だよ……っ!
あなた
……
弱く呼吸をしながら、ぼやけた視界の奥の虚空を見つめていた。視界にうつる屈強な男子クラスメートは、隣の席の男の子だった。出席番号が近く、出身の学校は違うのに、入学してからよく話していた。


あなたは下唇を噛む。



…つらい。

何もやっていないのに。なぜ?なぜこんなことに…?

こうなるように仕向けた本人は、「辛い思いをしたはずなのにいじめっ子に情をかけてあげる優しい女の子」を演出している。

そして、仲の良かった男子クラスメートはブリ子の言葉と偽の証拠を信じて、冷たい視線と暴力をこれでもかとばかりに浴びせてきている。


彼だけじゃない。隣のクラスの人気者も、真面目なあのひとも、友達も。あの日から、みんな私を遠巻きにしている。




それがどうしようもなく悔しく、また、悲しかった。



クラスメート
……おい?聞いてんの?
クラスメート
泣いてんじゃねぇよ。お前に泣く資格ねぇだろ!!

クラスメートは胸ぐらをつかんだまま、あなたの顔をのぞき込んでいる。
ああ、また殴られるのかな。


あなたは抵抗を諦めた。力尽きたように目を閉じる。





???
先生。この教室、先ほどから変な音が聞こえていたのですが





ブリ子
えっ……?


突然、空き教室まで聞こえてきた声。
そのセリフからわかることは、教師が近くにいるということだ。



焦ったクラスメートはぱっと胸ぐらを離した。
ドサッ、とそのままあなたは床にたたきつけられる。

クラスメート
………これ…やべぇんじゃ…?
ブリ子
……
ブリ子
…ひっ!い、今睨まれっ……!怖いっ!
 あなたを見ながら大げさに恐怖すると、ブリ子は空き教室を飛び出した。もちろん睨んでなんてない。まずそんな余裕は今のあなたにない。ただの逃げる理由付けだ。
クラスメート
あ、ちょっ……ま、待てよ!


クラスメートもブリ子も追いかけていく。






空き教室を静寂が満たした。


あなたは今際の際のように床に倒れ込んだまま、目を閉じた。



…いっそのこと今、死んでしまいたい。

こんなのがずっと続くぐらいなら。

暴力のなくなった、この静かな空間の中で───






???
アレで本当に逃げるとは。やはり権力者に頼るに限りますね
……誰かの声。おそらく、先ほど聞こえた声と一緒だ。
足音が近づいてきた。



???
………酷い
???
レディになんてことを。鬼畜の所業。人とはとても思えません



淡々とした男の声だ。
呼吸すら痛く感じる体でも、最後の力を振り絞って、あなたはうっすらと目を開く。




???
おや、意識がありましたか。よかったです
同級生と思わしき男子生徒は、あなたのそばにしゃがみ込んだ。
???
保健室まで歩けますか?あぁ無理そうですね
???
それでは、先生を呼んできますので。少々お待ちを
 
あなた
……まっ…て


呼吸音にかき消されそうなほどの小さな声。
しかし男子生徒には聞こえたようで、彼は振り返った。
???
なんでしょう?


…こうしたら、解決が遅くなるかもしれない。
けれど…。
あなた
………先生には…言わないで…
あなた
バレたら……あのひとたちに何をされるか…
 
???
……なるほど。了解しました
…よかった。




しかし男は次の瞬間、教室の外に叫んだ。
???
先生ー!!この空き教室に倒れた女子生徒が!!


あなた
……ぇ………?

いったいさっき何を了承したんだ あの男子生徒…!?

驚いたあなたの顔を見て、男子生徒は言う。
???
あぁ……。保健室に付き添って運ぶのは時間かかるし面倒なので
???
あと道中で絶対に教師にバレるじゃないですか。諦めましょうよ。諦めて暴露してしまうのが手っ取り早いのです

それなりの覚悟を持って「先生に言わない」という選択肢をとったのに、「運ぶの面倒」とかいうだいぶ適当な理由でそんなバッサリと……!?
あなた
……………
もう何も言えなかった。わざわざ覚悟を決める必要なんてなかったんだ。なんだか一気に脱力してしまって、目を閉じる。


???
あっ。南無阿弥
縁起でもないこと言うな。




 この物語は、この男子生徒────イギリスと、いじめられっ子のあなたが送る、万丈波乱な学校生活の話である。
 

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