第7話

フラれガールの恋バナ
2,430
2023/01/17 11:00
翌日の放課後。

私と帝先輩と颯さんは、オリジナル曲を作るため、うちのカラオケボックスのパーティールームに集まった。

そこに、ドリンクを持った優菜ちゃんが部屋に入ってくる。
坂部 優菜
坂部 優菜
うー、
私も一緒に聞きたかったのに、今日に限って太田さんが熱出ちゃって、バイトが休めない〜!
坂部 優菜
坂部 優菜
歌い手さんの曲作りを見れる機会なんて、めったにないのに!!
優菜ちゃんは、キーッと悔しがっている。
(なまえ)
あなた
まあまあ、今日は私のフラれたエピソードを話すだけだから。
優菜ちゃんが、これまで散々聞いてきた話だよ
坂部 優菜
坂部 優菜
そうかもしれないけどさぁ……
坂部 優菜
坂部 優菜
……あなたちゃん、
後で、ゆっくり話聞かせてね?
(なまえ)
あなた
うん、わかった
優菜ちゃんがしぶしぶ部屋を出て行くのを見送ると、パーティールームのソファに腰かけた。
相良 颯
相良 颯
さて、始めようか
机に筆記用具とスマホを置いた颯さんが、口を開いた。
(なまえ)
あなた
えっと、何を話せばいいんでしょうか?
吉村 帝
吉村 帝
お前の恋愛エピソードをいろいろ聞きたい。
何度もフラれてるんだろ?
それを話せ
(なまえ)
あなた
えーっと、じゃあ先週告ってフラれた天野先輩の話から……
(なまえ)
あなた
天野先輩は、サッカー部の副キャプテンで、本当に優しくてかっこよかったんです
吉村 帝
吉村 帝
ああ、うちのクラスの天野か。
どうやって知り合ったんだ?
(なまえ)
あなた
天野先輩の蹴ったボールが、通りがかりの私の頭に当たってしまったんです
(なまえ)
あなた
先輩はすぐに駆けつけてくれて……、
大丈夫ですって言ったのに、心配だからって保健室まで連れて行ってくれたんです
(なまえ)
あなた
もう、すっごく優しいと思いませんか?
吉村 帝
吉村 帝
優しいっつーか……
相良 颯
相良 颯
責任感、みたいな?
(なまえ)
あなた
それがきっかけで、私の中の『好きスイッチ』が入っちゃって、
(なまえ)
あなた
そうなったら、どんどん気持ちが盛り上がっちゃって、これは運命の相手に違いない、と!
吉村 帝
吉村 帝
運命……!?
(なまえ)
あなた
もう天野先輩のことが好きで好きでたまらなくなって、膨らみすぎた想いを抱えきれず告白したけど……、
(なまえ)
あなた
見事に玉砕でした
相良 颯
相良 颯
なるほど
吉村 帝
吉村 帝
で?
その前の男は?
(なまえ)
あなた
その前は、隣のクラスの宇野くんでした
(なまえ)
あなた
購買で最後の生クリームクロワッサンを取ろうとしたら、宇野くんと同時につかんじゃって。
私が手を引っ込めたら、宇野くんが、どうぞって譲ってくれたの
(なまえ)
あなた
その笑顔と優しさに、一気に『好きスイッチ』が入っちゃって
吉村 帝
吉村 帝
それだけで!?
(なまえ)
あなた
それから宇野くんの姿を見るたびに、ドキドキして、自分の中で気持ちが抑えきれなくなって……
吉村 帝
吉村 帝
で、また告白?
(なまえ)
あなた
はい。
けど、やっぱりフラれちゃって
吉村 帝
吉村 帝
だろうな
吉村 帝
吉村 帝
じゃ、次
(なまえ)
あなた
その前は、いつも河原でN高野球部のジャージを着てジョギングしていた人で、走る姿を見るたびに努力家だなぁって
吉村 帝
吉村 帝
で、また『好きスイッチ』とやらが?
(なまえ)
あなた
そうなんです!
私も彼と一緒に自転車で走って応援しようかな、とか、試合にはお弁当作ってあげたいな、とか妄想が膨らんで、彼に会うために、毎日河原をぐるぐる歩いてました
吉村 帝
吉村 帝
妄想だけで、好きになれるのか
相良 颯
相良 颯
……ここまでくると、もはや特技だね
吉村 帝
吉村 帝
で?
そいつにも告ったのかよ
(なまえ)
あなた
もちろん!
さすがにこの時は、望み薄だなと思ってたんですけど、
吉村 帝
吉村 帝
聞くまでもねぇけど、話したければ話せ
(なまえ)
あなた
向こうは私の存在すら知らなくて、ショックでした
(なまえ)
あなた
私の妄想の中では、二人で仲良くジョギングしていたので
吉村 帝
吉村 帝
ヤベェ奴だな
(なまえ)
あなた
その前は、数学の高橋先生で、
吉村 帝
吉村 帝
今度は教師かよ
相良 颯
相良 颯
もう、何でもありだね
(なまえ)
あなた
高橋先生は、数学が苦手な私を見捨てることなく、個人的な質問にも丁寧に付き合ってくれて……
* * *

そうして、どんどん過去にさかのぼってフラれネタを暴露していたら、
吉村 帝
吉村 帝
あー、もう、それくらいでいいや
(なまえ)
あなた
え?
まだ八人しか話してませんよ?
吉村 帝
吉村 帝
全部聞いていたらキリがねーよ。
もうネタ的には十分だ
相良 颯
相良 颯
なんていうか、もうお腹いっぱいって感じかな
優しい颯さんですら、苦笑いを浮かべている。

時計を見れば、かれこれ三十分以上、一人で話し続けていたことに気づく。
(なまえ)
あなた
……すみません、話し始めたら止まらなくて
吉村 帝
吉村 帝
一体、これまで何回フラれてんだよ
(なまえ)
あなた
さぁ……?
もう最近は数えてないので
また厳しいツッコミが来ると思ったのに、帝先輩はしばらくしてから、ぼそっとつぶやいた。
吉村 帝
吉村 帝
……そんなにフラれてばっかで、傷つかねーのかよ
(なまえ)
あなた
え?
まぁ、フラれた時はほんとに悲しいけど……
(なまえ)
あなた
やっぱり、恋って楽しいじゃないですか!
吉村 帝
吉村 帝
え?
(なまえ)
あなた
誰かに恋してると世界がキラキラして、毎日が楽しくてしかたないんです
(なまえ)
あなた
彼に会えただけで、その日は一日中ハッピーになれるし!
(なまえ)
あなた
……だから、私は誰かを好きになれただけで、幸せなんです!
吉村 帝
吉村 帝
……
夢中になって話す私を、帝先輩は黙って見つめていた。
相良 颯
相良 颯
あなたちゃんは、ポジティブでハートが強いんだね
(なまえ)
あなた
そうかも、です。
友達には、あきれられるけど
相良 颯
相良 颯
ここまでくると、もはや長所だよ。
見習いたいくらいだよね、帝?
吉村 帝
吉村 帝
え?
吉村 帝
吉村 帝
……こんなフラれてばっかりの奴、見習ってどうすんだよ
(なまえ)
あなた
……ですよね
帝先輩はそう毒づいたけれど、いつもよりちょっとだけ元気がないように見えた。

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