学校が終わって、一人カラオケをしていたけど、どれだけ歌っても、一向に心は晴れない。
私は歌の途中で、演奏停止ボタンを押した。
選曲してくださいと言う文字とともに、軽快なBGMが繰り返し流れる。
私はため息をつくと、広いパーティールームの天井をぼんやりと眺めた。
皮肉にも、この時間空いていたのは、このパーティールームだけだった。
仕方なくここで一人カラオケをしていたけれど、この部屋には、帝先輩たちとの思い出が多すぎる。
ほんの少し前のことなのに、ずいぶん前のことみたい。
目の前で歌ってくれた素敵な歌を、ひとつずつ思い出す。
急にさっきの言葉を思い出して、胸がぎゅっと痛くなる。
帝先輩はいつも毒舌だし、優しくないし、からかってくるけど、どこか温かみを感じていた。
帝先輩に突き放されたことが、こんなにも辛くて苦しいなんて。
つぶやくと、じわっと涙がにじんだ。
床に、ぽたっと涙が落ちた。
知らないうちに流れていた涙を、慌てて袖で拭いた。
涙がとめどなく流れて、止まらない。
その名前をつぶやくたびに、胸が切なくなる。
俺様で毒舌、おまけにプライドも高いのに、その反面、恋には人一倍臆病で傷つきやすくて。
そんな不器用なところも、全部含めて。
突き放されて、初めて自分の気持ちに気づくなんて。
自分で、自分の頭をコツンと叩いた。
唯人くんに告白したのも、盛大にフラれたら、また帝先輩に素敵な曲を作ってもらおうと思ってのことだった。
もう興味は無いと言った帝先輩の言葉を思い出して、また泣けてくる。
前に言われた言葉を思い出す。
ーー本当に人を好きになると、楽しいだけじゃなくて、こんなにも切なくて、悲しい気持ちになるんだって。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。