そして月曜日。
私は教室の自分の席で、一人ぼんやりとしていた。
昨日は唯人くんとの初デートで、すごく楽しかったはずなのに……、
帝先輩の言葉を思い出すたびに、寂しい気持ちが広がってしまう。
そう思うのに、胸の寂しさは消えてくれない。
机に伏していると、声をかけられた。
顔を上げると、机の横にクラスメイトで親友の朱里がいた。
含みのある言い方に、不安を覚える。
朱里は少しためらってから、手にしていたスマホを見せてくれた。
画像には、ペアリングをした男女の手が重なった写真に「6months♡」と文字が入っている。
どうやら、付き合って六ヶ月記念らしい。
続けて、水族館の水槽の前で寄り添う、男女のシルエットの写真が出てきて、はっとなる。
胸がドクンと嫌な音をたてた。
見覚えのある背格好、髪型、服装。
声が震える。
そして、最後の画像には『指輪ありがとう♡ ゆいくん、これからもずっと一緒にいようね』というメッセージがあった。
朱里の言葉に、うなずくことすらできない。
朱里の声が遠くなっていく。
私は信じられない思いで、ただスマホの画面を見つめていた。
心臓の鼓動が、ドクドクいってうるさい。
散りばめられた情報が、一気につながっていく。
怒りをこめた朱里の声に、胸をつかれた。
私はもう一度、スマホを見た。
高そうな大人っぽいペアリングと、水族館。
無料のカラオケと、公園。
もう、何もかもが信じられなくなる。
私はそう自分自身に言い聞かせて、なんとか平静を保った。
朱里は心配そうに私を見ていた。
口には出さなかったけど、朱里もきっと同じことを考えていたと思う。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。