第18話

疑惑
4,212
2023/04/04 11:00
そして月曜日。
(なまえ)
あなた
(あんまり眠れなかったな……)
私は教室の自分の席で、一人ぼんやりとしていた。

昨日は唯人くんとの初デートで、すごく楽しかったはずなのに……、
帝先輩の言葉を思い出すたびに、寂しい気持ちが広がってしまう。
(なまえ)
あなた
(って、帝先輩がいなくなっても、私には関係ないじゃん!)
(なまえ)
あなた
(私の彼氏は、唯人くんなんだから!)
そう思うのに、胸の寂しさは消えてくれない。

机に伏していると、声をかけられた。
朱里
朱里
ねぇ、あなた
(なまえ)
あなた
え?
顔を上げると、机の横にクラスメイトで親友の朱里あかりがいた。
朱里
朱里
……ねぇ、あなたって、霧島先輩と付き合ってるんだよね?
(なまえ)
あなた
うん。
そうだよ
朱里
朱里
あのさ、
……ちょっと見て欲しいものがあるんだけど
(なまえ)
あなた
なに?
朱里
朱里
本当は、あなたに見せてもいいのか迷ったけど、やっぱり教えておいたほうがいいと思って
含みのある言い方に、不安を覚える。
(なまえ)
あなた
なんのこと?
朱里は少しためらってから、手にしていたスマホを見せてくれた。
朱里
朱里
この投稿、見て。
私の中学時代の部活の先輩の紗穂さん。
今は違う高校に通ってるんだけど……、
画像には、ペアリングをした男女の手が重なった写真に「6months♡」と文字が入っている。

どうやら、付き合って六ヶ月記念らしい。

続けて、水族館の水槽の前で寄り添う、男女のシルエットの写真が出てきて、はっとなる。
(なまえ)
あなた
このシルエット、まさか……
胸がドクンと嫌な音をたてた。

見覚えのある背格好、髪型、服装。
(なまえ)
あなた
まさか、そんな……
声が震える。

そして、最後の画像には『指輪ありがとう♡ ゆいくん、これからもずっと一緒にいようね』というメッセージがあった。
朱里
朱里
これって、霧島先輩じゃない?
朱里の言葉に、うなずくことすらできない。
朱里
朱里
ずっと前から、紗穂先輩にすごいイケメンの彼氏ができたって聞いてたけど……、まさか霧島先輩とは思わなくて
朱里の声が遠くなっていく。

私は信じられない思いで、ただスマホの画面を見つめていた。
(なまえ)
あなた
(半年記念のペアリング……)
(なまえ)
あなた
(唯人くんが金欠って言ってたのは、これを買ったから?)
心臓の鼓動が、ドクドクいってうるさい。
(なまえ)
あなた
(昨日、三時に帰ったのは、水族館に行くため……?)
散りばめられた情報が、一気につながっていく。
朱里
朱里
これが本当なら……、二股じゃない?
(なまえ)
あなた
怒りをこめた朱里の声に、胸をつかれた。
(なまえ)
あなた
そんな……
私はもう一度、スマホを見た。
高そうな大人っぽいペアリングと、水族館。

無料のカラオケと、公園。
(なまえ)
あなた
(……どっちが本命かなんて、すぐにわかる)
もう、何もかもが信じられなくなる。
(なまえ)
あなた
(でも……、彼氏を疑うなんてよくないよね?)
私はそう自分自身に言い聞かせて、なんとか平静を保った。
(なまえ)
あなた
……今夜、唯人くんに直接聞いてみる
(なまえ)
あなた
もしかして、勘違いってこともあるかもしれないし
朱里
朱里
う、うん……。
そうだよね
朱里
朱里
……ごめん
朱里は心配そうに私を見ていた。
(なまえ)
あなた
ううん、朱里は悪くないよ。
教えてくれてありがとう
朱里
朱里
でも……
(なまえ)
あなた
(もうこれで、霧島先輩とは終わりかもしれない)
口には出さなかったけど、朱里もきっと同じことを考えていたと思う。

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