第4話

歌い手はフラれガールに興味あり!?
4,900
2022/12/27 11:00
相良 颯
相良 颯
そういえば、君、さっき一人カラオケしてたよね?
歌の練習でもしてたの?
優しい方の彼が、パソコンや機材を片付けながら、私に声をかけてくれた。
(なまえ)
あなた
ああ、あれは練習じゃなくて、憂さ晴らしっていうか……
相良 颯
相良 颯
憂さ晴らし?
吉村 帝
吉村 帝
まぁ、あれだけ音程気にせず叫びまくれば、憂さも晴れるだろうな
(なまえ)
あなた
(わかってるけど、この人、ほんとに毒舌!)
(なまえ)
あなた
下手ですみませんね!
四階はメンテナンス中って書いてあったから、誰の目も気にせずに、思いきり歌ってたんです
(なまえ)
あなた
……今日、告白してフラれたばかりで
私の言葉に、二人の顔色が変わった。
吉村 帝
吉村 帝
え?
マジかよ……
相良 颯
相良 颯
ごめんね、変なこと聞いちゃったかな
(なまえ)
あなた
いえ、気にしないでください。
よくあることだし
吉村 帝
吉村 帝
よくあること?
(なまえ)
あなた
私、しょっちゅうフラれるんで、もう慣れっこです
(なまえ)
あなた
高校に入ってから、もう二十回以上フラれてるし
吉村 帝
吉村 帝
はっ?
二十回以上!?
相良 颯
相良 颯
すごいハイペースだね……
(なまえ)
あなた
私、すぐに『好きスイッチ』が入っちゃうんですよね
(なまえ)
あなた
この人のこと好きかも、って思ったら、どんどん気持ちが盛り上がっちゃって……
(なまえ)
あなた
そうなるともう、告白せずにいられないんですよ!!
拳を握って熱弁する私を、二人はポカンとして見ていた。
(なまえ)
あなた
あっ、すみません、つい……
(なまえ)
あなた
(私、なんで初対面の人に、こんなこと話してるんだろう)
一人で反省していると、歌い手の彼は私を見て、つぶやいた。
吉村 帝
吉村 帝
いいな、それ……
(なまえ)
あなた
え?
吉村 帝
吉村 帝
……はやて、俺、今なら書けるかもしれねぇ
相良 颯
相良 颯
えっ、ホントに!?
(なまえ)
あなた
何の話?
吉村 帝
吉村 帝
決めた。
俺は、お前をモデルにして、オリジナル曲を作る!
(なまえ)
あなた
はっ?
相良 颯
相良 颯
待ってよ、帝。
一人で話を進めすぎだよ。
彼女も困っているじゃないか
優しげな彼が心配そうに声をかけてくれて、私はコクコクとうなずいた。
相良 颯
相良 颯
さっきの配信を見てわかったと思うけど、帝は歌い手、僕はミックス師をしてるんだ
(なまえ)
あなた
ミックス師?
相良 颯
相良 颯
ミックスっていうのはね、カラオケの音源と歌の音源を混ぜて、聞きやすい歌にすることだよ
(なまえ)
あなた
音を混ぜる……?
相良 颯
相良 颯
そう。
でもね、ただ音を混ぜればいいわけじゃない
相良 颯
相良 颯
音程やリズムを補正したり、機械を通して声を加工したり……、
良い作品にするために、ミックス作業は必要不可欠なんだ
吉村 帝
吉村 帝
この世に出てる音楽は、ほぼミキシングしてあるものだ
(なまえ)
あなた
そうなんですか……
吉村 帝
吉村 帝
颯は、かなり腕の立つミックス師なんだ
吉村 帝
吉村 帝
颯の手にかかれば、お前のド下手な歌も、万人が聞けるレベルに仕上げることができる
(なまえ)
あなた
それはすごいですね!
(なまえ)
あなた
……って、ド下手は余計ですけど!
相良 颯
相良 颯
僕と帝は、ずっとオリジナルの曲を作りたいと思っていてね
(なまえ)
あなた
歌い手さんが曲を作るんですか?
相良 颯
相良 颯
歌い手は、基本ボカロプロデューサーが作った曲や、歌手の曲をカバーすることが多いけれど、将来ライブもしていくなら、オリジナル曲もあった方がいい
吉村 帝
吉村 帝
将来、ドームツアーをやるのが俺の夢だからな
(なまえ)
あなた
ドームツアーって……、
すごい!
吉村 帝
吉村 帝
今はまだ夢の夢だけど、
いつか必ず実現してみせる
(なまえ)
あなた
(でも、この人すごく歌がうまかったし……、
本当にいつかドームツアーとか、できるかも)
相良 颯
相良 颯
そのために、今のうちから曲を作りためておきたいんだ
相良 颯
相良 颯
僕も今、必死で作曲の勉強をしてるところ
(なまえ)
あなた
へぇ……
目標に向かって努力している二人を見ていたら、自然と応援したくなる。
吉村 帝
吉村 帝
そこで、お前にも協力してほしい
(なまえ)
あなた
協力?
吉村 帝
吉村 帝
お前を見てたら、何かひらめきそうな気がしたんだ。
面白い歌詞が書けそうな気がする
(なまえ)
あなた
面白いって、どういう意味ですかっ!?
吉村 帝
吉村 帝
もし、俺たちの曲作りに協力してくれるなら、今日の部屋代は俺が払う
(なまえ)
あなた
えっ、部屋代を!?
吉村 帝
吉村 帝
ああ。
悪くない条件だろ?
(なまえ)
あなた
じゃあ、やります!
吉村 帝
吉村 帝
よし、交渉成立だな。
えっと……
吉村 帝
吉村 帝
そういえば、お前、なんて名前なの?
(なまえ)
あなた
桜庭あなた、です
吉村 帝
吉村 帝
ふーん、あなたか。
よろしくな
吉村 帝
吉村 帝
俺は帝で、あっちは颯。
ちなみに俺は、Simっていう歌い手名で活動してる
(なまえ)
あなた
シムって、SIMカードの?
吉村 帝
吉村 帝
ちげーよ。
名字の吉村よしむらから取ったんだよ
(なまえ)
あなた
よしむら、からの……、
なるほど!
吉村 帝
吉村 帝
じゃ、来週またこの店に来るから、よろしくな
(なまえ)
あなた
わかりました。
……でも、曲作りのお手伝いって、何をすればいいんですか?
吉村 帝
吉村 帝
お前は、もっとフラれてこい
(なまえ)
あなた
はあっ!?
吉村 帝
吉村 帝
いい歌詞が思いつくかもしれないからな
(なまえ)
あなた
な、なにそれ!?
(なまえ)
あなた
(この人、性格悪ーっ!!)
吉村 帝
吉村 帝
おっと、そろそろ貸切の時間が終わるな。
もうお前に用事はないから、帰れ
(なまえ)
あなた
えっ? えっ?
そう言って、彼は私を部屋の外へと追い出したのだった。

プリ小説オーディオドラマ