その後、一日をどう過ごしていたのか、ほとんどおぼえていない。
夜になって、ようやく決心がつくと、私は唯人くんにメッセージを送った。
しばらく返信を待っていると、唯人くんから電話がかかってきた。
いつも通りの優しい声に、胸が痛む。
本当のことを知るのは怖いけど、勇気をふりしぼって切り出した。
唯人くんは驚いて、言葉を失う。
しばらくの間、沈黙が続いた。
その声は怒ってるわけでも、こまってるわけでもない、淡々としたものだった。
電話の向こうの唯人くんは、私の言葉に何も答えない。
嘘でもいいから、違うって言ってくれれば、少しは救われるのに。
謝られて、もっと辛くなった。
私の疑問には答えず、唯人くんは開き直ったように言った。
まだ気持ちの整理がつかないのに、すぐに答えられるわけがない。
予想外の展開に、頭が全く追いついていかない。
唯人くんの言葉に、ギョッとなる。
なんとも無責任なセリフに、あいた口が塞がらない。
考える間もなく、ポロリと、口から出てきた。
あまりにもあっさり言われて、びっくりしていると、
その言葉とともに、プツッと電話は切れた。
私は、通話モードの終了したスマホの画面を見つめた。
ちっともおかしくないのに、笑えてきた。
やっとつかんだ幸せは、一週間と持たなかった。
スマホの画面は唯人くんとのトーク画面に戻っていて、昨日までの楽しいやりとりが目に入る。
私はそれをまともに見られなくて、すぐにトークルームを非表示にした、
唯人くんの笑顔とともに、情けないやら、悔しいやら、いろんな感情が湧き上がってくる。
布団にくるまってぎゅっと目を閉じた私は、声を殺しながら一人で泣いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。