第23話

告白
5,941
2023/05/09 11:00
私の決意に大きくうなずいた優菜ちゃんは、私の手を取って言った。
坂部 優菜
坂部 優菜
……わかった
坂部 優菜
坂部 優菜
あなたちゃん、がんばって!
私も応援するよ!
(なまえ)
あなた
ありがとう
坂部 優菜
坂部 優菜
フラれたら、私がとことん慰めてあげるから、安心して行っておいで!
(なまえ)
あなた
うん!
優菜ちゃんの言葉に、勇気づけられる。
(なまえ)
あなた
あ……、でもどうやって告白しよう?
(なまえ)
あなた
もう私の曲は作らないって言ってたし、学校でも避けられてたし……
坂部 優菜
坂部 優菜
そういうことなら、私に任せなさい
(なまえ)
あなた
え?
優菜ちゃんは胸をドンとたたいて部屋を出ると、店のカウンターに入っていった。
(なまえ)
あなた
優菜ちゃん?
そこで優菜ちゃんは、カウンターの奥の戸棚から大きなファイルを出して、来店者カードの束をペラペラとめくり始めた。
坂部 優菜
坂部 優菜
あった!
優菜ちゃんは、一枚のカードをファイルから取り出して私に突きつけた。
坂部 優菜
坂部 優菜
ほら、帝くんの住所!
(なまえ)
あなた
えっ
来店者カードには、帝先輩の住所と電話番号が書かれてある。
坂部 優菜
坂部 優菜
個人情報だから、本当はいけないんだけど……、
店長には内緒ね!
そう言って、優菜ちゃんは人差し指を口元に当てた。
坂部 優菜
坂部 優菜
ほら、これ見て行っておいで!
そう言って、グッと親指を立てた優菜ちゃんに、胸が熱くなる。
(なまえ)
あなた
優菜ちゃん……!
(なまえ)
あなた
ありがとう!
私、行ってくる!
坂部 優菜
坂部 優菜
がんばれ!!
私は帝先輩のカードを手に取ると、店を飛び出した。

* * *
(なまえ)
あなた
たぶん、この辺り……
スマホに表示されたルートに従って、どうにか帝先輩の家までやってきた。

ローマ字で吉村と書かれた表札を確認して、インターフォンを鳴らそうかと迷っていると、ガチャッと玄関のドアが開く。
(なまえ)
あなた
ちょうど出かけるところだったのか、帝先輩が家から出てきた。
(なまえ)
あなた
帝先輩!
思わず声をかけると、家の前にいた私に気づいて、帝先輩は目を丸くした。
吉村 帝
吉村 帝
……えっ!?
吉村 帝
吉村 帝
な、なんでお前が、ここにいるんだよ!?
(なまえ)
あなた
あの、帝先輩にお話があって……
吉村 帝
吉村 帝
話って……、
吉村 帝
吉村 帝
つーか、なんで俺の家がわかったんだよ?
(なまえ)
あなた
うちの店の来店者カードを見て来ました!
そう言って、持っていたカードを見せると、
吉村 帝
吉村 帝
おい!
個人情報、乱用すんな!
(なまえ)
あなた
すみません!
緊急事態だったので、つい……
吉村 帝
吉村 帝
緊急事態?
(なまえ)
あなた
帝先輩、歌えなくなったって本当ですか?
吉村 帝
吉村 帝
私の言葉に、帝先輩は辛そうな顔をして目をそらした。
吉村 帝
吉村 帝
……場所、変えるか
* * *

近くの公園まで来ると、前を歩いていた帝先輩が振り返った。
吉村 帝
吉村 帝
……で、話って?
(なまえ)
あなた
颯さんから、帝先輩が歌えなくなったって聞いたんですけど、どういうことですか?
吉村 帝
吉村 帝
……そのままだよ。
今は、歌を歌える状態じゃなくなった
そう言った帝先輩は、いつもより元気がなくて、見ていて心配になる。
(なまえ)
あなた
どうして?
何があったんですか?
吉村 帝
吉村 帝
……お前には、関係ねぇ
(なまえ)
あなた
また突き放されて、胸が痛くなったけど、ぐっと拳を握りしめて勇気を出して言った。
(なまえ)
あなた
関係なくないです。
私も、Simのファンの人たちだって、みんな帝先輩の歌を待ってます
私の言葉に、帝先輩ははっと顔を上げた。
(なまえ)
あなた
私、帝先輩が元気になってほしいから
(なまえ)
あなた
今から、初めて本当に好きになった人に、人生最大の告白をします!
吉村 帝
吉村 帝
え?
(なまえ)
あなた
そして、盛大にフラれます!
帝先輩は驚いた顔をして、ただ私を見つめていた。
(なまえ)
あなた
帝先輩は、俺様で毒舌だけど、恋には臆病で不器用で……、
吉村 帝
吉村 帝
……はっ?
いきなり悪口を連ねた私に、帝先輩は顔をしかめた。
(なまえ)
あなた
でも、だからこそ帝先輩は、聴いてる人の心に届く歌を歌えるんです!
吉村 帝
吉村 帝
えっ……
(なまえ)
あなた
歌ってる時の、キラキラ輝いてる帝先輩も好きですけど、
(なまえ)
あなた
フラれてばかりの私を、いじりながらも温かく見守って、素敵な歌を作ってくれて……、
(なまえ)
あなた
だから、えっと、
ドキドキしすぎて、もう自分が何言ってるのかわからなくなる。
(なまえ)
あなた
(けど、これだけは言わなくちゃ!)
私は息を大きく吸うと、一気に思いを吐き出した。
(なまえ)
あなた
私、帝先輩が、好きです!!
吉村 帝
吉村 帝
はっ!?
……俺?
やっと自分への告白だと気づいた帝先輩に、私は静かにうなずいた。
(なまえ)
あなた
帝先輩、どうぞ、ガツンと私をふってください!!

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