私の決意に大きくうなずいた優菜ちゃんは、私の手を取って言った。
優菜ちゃんの言葉に、勇気づけられる。
優菜ちゃんは胸をドンとたたいて部屋を出ると、店のカウンターに入っていった。
そこで優菜ちゃんは、カウンターの奥の戸棚から大きなファイルを出して、来店者カードの束をペラペラとめくり始めた。
優菜ちゃんは、一枚のカードをファイルから取り出して私に突きつけた。
来店者カードには、帝先輩の住所と電話番号が書かれてある。
そう言って、優菜ちゃんは人差し指を口元に当てた。
そう言って、グッと親指を立てた優菜ちゃんに、胸が熱くなる。
私は帝先輩のカードを手に取ると、店を飛び出した。
* * *
スマホに表示されたルートに従って、どうにか帝先輩の家までやってきた。
ローマ字で吉村と書かれた表札を確認して、インターフォンを鳴らそうかと迷っていると、ガチャッと玄関のドアが開く。
ちょうど出かけるところだったのか、帝先輩が家から出てきた。
思わず声をかけると、家の前にいた私に気づいて、帝先輩は目を丸くした。
そう言って、持っていたカードを見せると、
私の言葉に、帝先輩は辛そうな顔をして目をそらした。
* * *
近くの公園まで来ると、前を歩いていた帝先輩が振り返った。
そう言った帝先輩は、いつもより元気がなくて、見ていて心配になる。
また突き放されて、胸が痛くなったけど、ぐっと拳を握りしめて勇気を出して言った。
私の言葉に、帝先輩ははっと顔を上げた。
帝先輩は驚いた顔をして、ただ私を見つめていた。
いきなり悪口を連ねた私に、帝先輩は顔をしかめた。
ドキドキしすぎて、もう自分が何言ってるのかわからなくなる。
私は息を大きく吸うと、一気に思いを吐き出した。
やっと自分への告白だと気づいた帝先輩に、私は静かにうなずいた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。