第16話

初デート
4,783
2023/03/21 11:00
そして迎えた日曜日。

今日は記念すべき、人生で初めてのデート!

今朝は早起きして、何時間もかけて身支度したから、髪の毛も服もばっちり。 

待ち合わせの駅で、二十分前から待機していると、到着した電車から降りてくる人の中に、唯人くんの姿を見つけた。
(なまえ)
あなた
(き、来たっ!)
(なまえ)
あなた
(唯人くん、かっこよすぎ……!!)
大勢の人の中でも、唯人くんだけが輝いて見える。
(なまえ)
あなた
(制服姿もかっこいいけど、私服はさらに素敵!)
白と黒のモノトーンコーデに、センスの良いキャップやピアスをうまく合わせていて、アパレルショップの店員さんみたい。
(なまえ)
あなた
(いや、ファッションモデルでもいける……!)
唯人くんを目で追っていると、近くにいた女子たちも、イケメンな唯人くんに気づきはじめた。
女子1
ねぇ、あの人、めちゃくちゃかっこよくない?
女子2
芸能人かな。
それかモデルとか?
(なまえ)
あなた
(でしょう?
やっぱりそう思う?)
私は二人の会話を聞きながら、一人でニンマリしてしまう。
(なまえ)
あなた
(私の彼氏だけどね!)
胸を張っていると、まもなくして唯人くんが私に気づいてやってきた。
霧島 唯人
霧島 唯人
お待たせ!
霧島 唯人
霧島 唯人
早く来たつもりだったのに、あなたちゃんはもっと早かったね
(なまえ)
あなた
はい!
楽しみすぎて、早く着いちゃいました!
はりきって言うと、唯人くんは柔らかく笑ってくれた。
霧島 唯人
霧島 唯人
かわいいこと言うね。
じゃ、行こうか
(なまえ)
あなた
はい!
遠巻きに、さっきの女子二人が私を羨ましそうに見ているのが、わかった。

* * *

駅から歩いて、うちのカラオケボックスの前までやってきた。
(なまえ)
あなた
ここ、うちの両親が経営してるので遠慮なくどうぞ!
霧島 唯人
霧島 唯人
へぇ!
おうちがカラオケボックスなんだ。
いいね
(なまえ)
あなた
はい!
いつでも歌い放題です!
霧島 唯人
霧島 唯人
うらやましいな。
僕もカラオケ好きなんだ
(なまえ)
あなた
ぜひ聞いてみたいです!
唯人くんと笑いながら店に入ると、カウンターには優菜ちゃんがいた。
坂部 優菜
坂部 優菜
いらっしゃいませ……、
あ、あなたちゃん!
お部屋取っておいたよ
(なまえ)
あなた
優菜ちゃん、ありがとう!
(なまえ)
あなた
こちら、彼氏の唯人くんです
霧島 唯人
霧島 唯人
こんにちは
坂部 優菜
坂部 優菜
唯人くんが微笑んだ途端、優菜ちゃんはパチパチと目を瞬いて、固まった。
坂部 優菜
坂部 優菜
こ、こんにちは……
(なまえ)
あなた
優菜ちゃん、どこのお部屋?
坂部 優菜
坂部 優菜
あっ、ごめん!
504で!
はっと我にかえった優菜ちゃんは、動揺を振り払うようにリモコンやおしぼりの準備を始めた。
(なまえ)
あなた
唯人くん、何か飲む?
ドリンクは飲み放題だよ!
霧島 唯人
霧島 唯人
じゃあ、コーラで
(なまえ)
あなた
わかった。
すぐ作ってくるから、ちょっと待ってて
霧島 唯人
霧島 唯人
うん
そうして私がドリンクのコップを取りに厨房に入ると、優菜ちゃんがあわてて入ってきた。
坂部 優菜
坂部 優菜
ちょ、ちょっとあなたちゃん!
坂部 優菜
坂部 優菜
何なの?
あの規格外のイケメン彼氏はっ!?
優菜ちゃんは興奮した様子で言った。
(なまえ)
あなた
カッコいいでしょ?
唯人くん、学校で一番モテるからね!
坂部 優菜
坂部 優菜
よくそんな人と付き合えたね!
あんなイケメン彼氏なら、私だって友達に自慢しまくりだよ
(なまえ)
あなた
私も、未だに信じられないんだけどね
坂部 優菜
坂部 優菜
これまでフラれ続けて、やっと運が回ってきたのかもね!
(なまえ)
あなた
そうなの、かな
坂部 優菜
坂部 優菜
じゃ、ごゆっくり!
帰る時は、部屋の片付けをよろしくね
(なまえ)
あなた
うん!
そして私は、オレンジジュースとコーラの入ったコップを持って、厨房を出た。

* * *
霧島 唯人
霧島 唯人
〽︎
君との約束
いつか、またここで会おう……
唯人くんが歌い終わると、私は拍手を送る。
(なまえ)
あなた
唯人くん、歌上手なんだね!
ビックリしたよ!
霧島 唯人
霧島 唯人
ありがとう
(なまえ)
あなた
(超絶イケメンで、優しくて、歌もうまくて、唯人くん最強!)
感動しながら唯人くんを見ると、優しく微笑んでくれる。
霧島 唯人
霧島 唯人
あなたちゃんこそ、歌いこんでるだけあって、上手だね
(なまえ)
あなた
まぁ、歌ってる量は人より多いから……
照れ笑いしていると、耳になじみのあるイントロが流れ始める。
(なまえ)
あなた
あ、この歌……、
(なまえ)
あなた
『Polaris』!
霧島 唯人
霧島 唯人
〽︎
北の空 見上げれば……
(なまえ)
あなた
(この曲、前に配信で帝先輩が歌ってたっけ)
ふと、帝先輩の歌を思い出す。
(なまえ)
あなた
(唯人くんもうまいんだけど……、帝先輩の歌は、聞いている人の心に響くような歌声なんだ)
時に激しく、時に切なく、聞いてる人の感情を揺さぶる。
(なまえ)
あなた
(……って、帝先輩は歌い手なんだから、うまくて当たり前だし!
普通の人と比べちゃだめだって!)
(なまえ)
あなた
(今は、彼氏である唯人くんの歌をちゃんと聞かなくちゃ!)
そう思って、唯人くんの歌に集中するけど、どうしても『Polaris』を聞くと、帝先輩の歌声を思い出してしまう。
(なまえ)
あなた
(あー、もう何なの私!?
これじゃ、唯人くんにも悪いし!)
(なまえ)
あなた
(ダメだ、この店は帝先輩の印象が強すぎる)
そして、唯人くんが歌い終えると、私は立ち上がって言った。
(なまえ)
あなた
ね、ねぇ!
今日はすごく天気もいいし、今から公園に行かない?
霧島 唯人
霧島 唯人
え?
まだ一時間も歌ってないけど……
いきなりの提案に、唯人くんはびっくりしていたけど、私は構わず続けた。
(なまえ)
あなた
あのねっ、もうすぐうちの親がお店に来るみたいで。
タダで使ってることがばれると面倒だから、出た方がいいかも!
口から出まかせで、それとなく理由をつけて説明すると、唯人くんはうなずいて言った。
霧島 唯人
霧島 唯人
そっか。
それじゃ、出たほうがよさそうだね
(なまえ)
あなた
唯人くん、ごめんね
(なまえ)
あなた
(ここにいると、帝先輩のことばかり思い出してしまうから……)
心の中でもう一度、唯人くんに謝った。
霧島 唯人
霧島 唯人
気にしないで。
そもそも僕が金欠だって言ったから、気を使わせちゃって
(なまえ)
あなた
ううん!
私は唯人くんといられれば、どこだっていいよ
(なまえ)
あなた
そうだ、コンビニでお昼買って、公園で食べるのはどう?
霧島 唯人
霧島 唯人
いいね
そうして、私たちは店を後にした。

プリ小説オーディオドラマ