第20話

笑い飛ばして欲しいのに
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2023/04/18 11:00
次の日。

朝、学校に行くと、すぐに朱里が私の元へとやってきた。
朱里
朱里
あなた、そのあと、どうなった?
霧島先輩に聞いたの?
(なまえ)
あなた
うん
朱里
朱里
……どう、だった?
(なまえ)
あなた
朱里のいう通り、二股かけられてた
朱里
朱里
(なまえ)
あなた
だから、唯人くんと別れた
私の言葉に、朱里は手を合わせると、
朱里
朱里
……ごめん!
私のせいだよね
朱里
朱里
私が昨日、あなたにあんなの見せたから……
(なまえ)
あなた
ううん、朱里は悪くないよ。
本当のことを教えてくれただけだから
(なまえ)
あなた
それに、朱里から聞いてなかったら、ずっと二股かけられたまま付き合ってただろうし
朱里
朱里
やっぱり、紗穂先輩と……?
(なまえ)
あなた
うん。
唯人くん、あっさり認めたよ
朱里
朱里
えっ!?
(なまえ)
あなた
少しでも否定してくれたら、よかったんだけどね……
(なまえ)
あなた
唯人くんは、自分ではどちらも選べないから、どうしたいって言われて……、
別れることにした
朱里
朱里
はあっ?
どっちも選べないって、何言ってるの!?
朱里
朱里
霧島先輩、サイテーだよ!
(なまえ)
あなた
朱里……
朱里が、自分のことのように怒ってくれて、少しだけ気持ちが軽くなる。
朱里
朱里
霧島先輩が、そんなゲスな男だとは思わなかった!
朱里
朱里
そんな最低男のことなんか、パーッと騒いで忘れよっ!
放課後にカラオケ行こう
朱里
朱里
今日は、とことん付き合うよ!
(なまえ)
あなた
ありがとう
朱里
朱里
よーし!
今日はダイエットを忘れて、ジュースやお菓子いっぱい買っていくから
(なまえ)
あなた
……うん
朱里の励ましのおかげで、少しだけ笑顔が戻った。

* * *

そしてお昼休み。

私は、一人で慣れない三年生の教室が並ぶ南校舎へとやってきた。
(なまえ)
あなた
(帝先輩、いるかな……)
唯人くんにフラれたことを、帝先輩にも報告しようと思った。

帝先輩のことだから『やっぱり、フラれると思った』なんて言いながら、意地悪そうに笑うんだろうな。
(なまえ)
あなた
(でも、今は、帝先輩に思い切り笑い飛ばしてほしい)
(なまえ)
あなた
(じゃないと、やりきれないよ……)
帝先輩のクラスから、にぎやかな声が聞こえてくる。

教室の扉からのぞいて探すけど、姿が見当たらない。
(なまえ)
あなた
あれ?
いない……?
しばらく待っても戻ってくる気配がないので、教室に入ろうとしていた女の先輩に声をかけた。
(なまえ)
あなた
あの、
吉村先輩は、いますか?
女性生徒1
吉村くん?
えーっと……
その人は、ぐるりと教室を見渡した後、
女性生徒1
あ、そういえば吉村くん、
今日お休みだったかも
(なまえ)
あなた
お休み……
私は拍子抜けしたままお礼を言うと、自分の教室に戻った。
(なまえ)
あなた
(仕方ない、帝先輩には明日言おう)
* * *

次の日こそは帝先輩に言おうと思ってたのに、その日も、またその次の日も、帝先輩は学校を休んでいた。
(なまえ)
あなた
(帝先輩、三日も休むなんて、どうしたんだろう)
授業中もそのことばかり考えて、先生の話が全然頭に入ってこない。
(なまえ)
あなた
(SimのSNSも、ここ数日投稿がないし……、風邪でもひいて寝込んでるのかな)
ため息をついて教室の窓から外を見ていると、鞄を持って歩いている帝先輩の姿が目に入った。
(なまえ)
あなた
(帝先輩!?)
遅刻してきたのか、ゆっくりと歩きながら校舎に入っていく。
(なまえ)
あなた
(よかった!
やっと来た……!)
私はいてもたってもいられなくなって、先生に手を挙げると、
(なまえ)
あなた
先生!
具合が悪いので、保健室に行ってもいいですか?
先生
……あら、大丈夫?
行ってらっしゃい。
一人で平気?
(なまえ)
あなた
はい
私は教室を出ると、ダッシュで南校舎の昇降口へと向かった。
(なまえ)
あなた
(渡り廊下を使って先回りすれば、帝先輩と会えるかも)
そう思って、昇降口に続く階段を降りていくと、ちょうど下から登ってきた帝先輩の姿が目に入った。
(なまえ)
あなた
帝先輩!
吉村 帝
吉村 帝
え?
帝先輩は私の姿に驚いていたけど、すぐに目をそらし、黙って階段を駆け上がる。
(なまえ)
あなた
あ、あの!
そのまま通り過ぎようとした帝先輩を呼び止めると、
吉村 帝
吉村 帝
なに?
冷たいその反応に、思わず言葉を失う。
(なまえ)
あなた
えっと……
(なまえ)
あなた
唯人くんとのことなんだけど……
吉村 帝
吉村 帝
あー、
そういうの、もういいから
(なまえ)
あなた
えっ?
突き放すような言い方に、私の思考が停止する。
吉村 帝
吉村 帝
これまで、いろいろいじって悪かったな
吉村 帝
吉村 帝
もうお前の恋バナには興味ねぇし、今後、お前のことを歌にする気もない
(なまえ)
あなた
帝先輩の言葉に、いい知れぬショックを受ける。
吉村 帝
吉村 帝
じゃあな
(なまえ)
あなた
あ……
まだ言いたい事はたくさんあったのに、私はただ、去っていく帝先輩の背中を見つめることしかできなかった。

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