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第1話

フラれガールはカラオケで憂さ晴らし
15,307
2022/12/06 11:00
(なまえ)
あなた
天野あまの先輩のことが、好きです!
天野先輩
えっ……
サッカー部の天野先輩は、私の突然の告白に驚いて、言葉を失っているようだった。
天野先輩
えっと、君は……?
(なまえ)
あなた
あっ、私、二年五組の
桜庭さくらばあなたっていいます!
(なまえ)
あなた
その、先輩は私のこと知らないと思うけど……、
(なまえ)
あなた
部活の練習中に、天野先輩のサッカーボールが当たったあの日から、
ずっと先輩のこと、想っていました!
天野先輩
ああ、あの時の……、
天野先輩
そっか。
……ありがとう
天野先輩は、そう言ってはにかんだ。
(なまえ)
あなた
(もしかして、今回はうまくいく……?)
ドキドキしながら、先輩の言葉の続きを待っていると、
天野先輩
あの、気持ちはすごくうれしいけど、
(なまえ)
あなた
(きた! このセリフは……)
盛り上がった気持ちが急速に冷めていく。
天野先輩
他に好きな人がいて……、
君の気持ちには応えられない
天野先輩
ごめん
申し訳なさそうな顔をした先輩に、私はぶんぶんと首を横に振った。
(なまえ)
あなた
ぜんぜん大丈夫です!
私の一方的な片思いだったので……、
告白できただけでも満足です!
(なまえ)
あなた
ありがとうございました!
さようならっっ!
天野先輩
 あっ……
私はいたたまれなくなって、猛ダッシュでその場から走り去った。

* * *
いったん家に帰ったものの、一人でいるのは寂しすぎて、私は両親が経営するカラオケボックス『Jardinジャルダン』にやってきた。
(なまえ)
あなた
優菜ゆうなちゃーん!
いるー?
カウンターから声をかけると、アルバイトの優菜ちゃんが奥から出てきた。
坂部 優菜
坂部 優菜
あなたちゃん?
いらっしゃ〜い
優菜ちゃんは、この店でアルバイトをしている二十三歳のフリーター。

ショートカットで童顔な優菜ちゃんは、見た目だけなら女子高生でも通ると思う。
(なまえ)
あなた
優菜ちゃん、聞いてよ〜
涙声で訴えた私に、優菜ちゃんはすぐにピンときたようで、
坂部 優菜
坂部 優菜
あっ、もしかして、
また今日もフラれた?
優菜ちゃんの言葉に、私はこくりとうなずいた。
坂部 優菜
坂部 優菜
連続フラれ記録、更新中だね。
今年に入って何回目?
(なまえ)
あなた
わかんない。
最近は、もう数えるのやめちゃったもん
坂部 優菜
坂部 優菜
二十回超えたあたりから、わからなくなったね
(なまえ)
あなた
……今度こそは、運命感じてたんだよ!
じわりと涙がにじんで鼻をすすると、優菜ちゃんが、よしよしと頭を撫でてくれる。
坂部 優菜
坂部 優菜
まぁ、縁がなかったってことだよ。
大丈夫。
あなたちゃんなら、すぐ次の恋が見つかるって
(なまえ)
あなた
ううん。
今回の失恋の痛手は、長く引きずると思う
坂部 優菜
坂部 優菜
……二週間前にフラれた時も、同じこと言ってたからね
(なまえ)
あなた
えっ、そうだっけ?
坂部 優菜
坂部 優菜
この際、いったん恋愛は休憩したら?
坂部 優菜
坂部 優菜
でさ、一緒に歌い手にハマってみない?
坂部 優菜
坂部 優菜
カッコいい人もイケボも、たーくさんいるよ?
そう言って、優菜ちゃんはカウンターの下から、彼女が大好きな歌い手『リアムくん』のイラストが入ったうちわを出した。
坂部 優菜
坂部 優菜
推し活してると、恋人なんかいなくたって、毎日ときめくし、楽しいよ?
優菜ちゃんは、うちわに描かれたリアムくんに、チュッと口づけした。
(なまえ)
あなた
はは……
二十三歳、彼氏なしの優菜ちゃんは、人気歌い手グループ『ソアラ』にはまっていて、アルバイトで稼いだお金のほとんどを推し活に費やしている。
坂部 優菜
坂部 優菜
けど、あなたちゃんは、リア充になるのが夢だもんね
(なまえ)
あなた
そう!
絶対に高校生のうちに彼氏を作って、素敵な青春を送るんだから!
そのためには何度フラれたって、負けないもん!
(なまえ)
あなた
……でも、やっぱりフラれるのってツラい〜〜
また天野先輩にふられたことを思い出して、がっくりとうなだれた。
坂部 優菜
坂部 優菜
こんな時は、思いっきり歌って発散するしかないよ
坂部 優菜
坂部 優菜
空いてる部屋で、思い切り歌っておいで!
(なまえ)
あなた
だね!
坂部 優菜
坂部 優菜
あ、いらっしゃいませー
話が一段落したところで、ちょうどお客さんが入ってきたので、私はあわててカウンター前から移動した。

接客用の笑顔を浮かべた優菜ちゃんが、こっそり耳打ちしてくれる。
坂部 優菜
坂部 優菜
あなたちゃん、空いてる部屋は、好きに使ってていいから
(なまえ)
あなた
ありがと
私はカウンターの奥のスタッフルームに入ると、部屋の使用状況を確認する。


見れば、四階が機械のメンテナンスで、客は入れないようにしてある。
(なまえ)
あなた
よし、四階にしよっと
私はそのまま、階段を駆け上った。

* * *
(なまえ)
あなた
〽︎
Hey!
歌え! 感じるままに
叫べ! 心のままに

イィィィイャオウ!!
私はふられた腹いせに、叫ぶように歌った。
(なまえ)
あなた
あー、スッキリするー!
やっぱり失恋したときは、歌って発散しないとね!
(なまえ)
あなた
よーし、もう一回歌っちゃうんだから!
(なまえ)
あなた
〽︎
Hey!
歌え! 感じるままに
叫べ! 心のままに

イィィィイャオウ!!
吉村 帝
吉村 帝
うるせぇ!
いきなり部屋のドアがバタンと開けられたかと思うと、若い男の人が怒鳴り込んでくる。
(なまえ)
あなた
!?
吉村 帝
吉村 帝
早くここから出て行け!
(なまえ)
あなた
はぁっ?
あんまりにも理不尽なその内容に、私はぽかんとしてその男の人を見つめることしかできなかった。

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