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第1話

プロローグ「再開」
4
2018/09/02 03:53
PM02:56
ーCafeかもめー

「ここ、か。」

カランコロン

ドアを開けると、そこには外とはまるで違う雰囲気が漂っていた。
コーヒーの良い香り、朗らかな客達の会話。
少し狭いその空間には、なにか落ち着くものがあるように感じた。

「あっ、いらっしゃいませ!お席好きな所にどうぞ~」
にっこりと笑った明るそうな女性の店員さんが声をかけてくれた。

「あ、、ありがとうございます。」
「いいえ、ご注文がお決まりになりましたらいつでもお呼びくださいね。」

店員さんは女の人と、、、立派な白髪のおじいさん、、、マスターかな?

、、、いない、か。
いないよね、当たり前だよね、やっぱり噂は噂だよね。


あの人が、生きてるなんて。

目が潤んできた、泣きそうだった。本当に、信じてたわけじゃないのに、ちょっとだけ、期待してただけなのに。

「やばいやばい、、、」
濡れかかった目をごしごしと腕で拭い、気を取り直して何か頼もうとメニューを見た。

、、、あるメニューが目に止まった。

《自慢のお手製!元気のおまじないクッキー》


『ほら、もう泣くなって、これ食べてみって、元気でるから、大丈夫だから。』
『クッキー、、、美味しい、、、元気出た、かも。』
『だろ!美味いだろ!もっと食べなって!』
『あははっ、まるで元気のおまじないクッキーだね、、、!』

、、、。
「あの、すみません、、、このクッキーお願いします、、、!」
「えーっと、はい、ご注文承りました、おまじないクッキーですね!少々お待ちください。」


「おまたせ致しました、元気のおまじないクッキーです。」
「どうも、、」

ひと口食べた。
あの味だ、この口に入ってからしゅわっと溶ける感じ、程よい焼き加減、、、!


「あのっ、すみません!」
「はい、どうされましたか?」
「このクッキー、、、どなたが作られてますか?」
「ああこれはね、もう1人の男の店員さんがいるんだけどね、その人が。美味しいわよね~」
「、、、その男の人の名前って、教えてもらったりできますか?」
「矢崎 束咲(やざき つかさ)さんよ。あなた、もしかして知り合いだったりするの?」

つかさ、つかさ、つかさ、、、!
いる、あの人は、まだ生きててくれていた、、、!

「あの、その人いつこのお店に来るかとか分かりますか!?」
「もうすぐシフトの時間だから、多分そろそろいらっしゃるかなと、、、」

その時だった。

カランコロン
「お疲れ様です、矢崎シフト入りまーす。」

外の眩しい光の中から、

あの懐かしい雰囲気と声と共に
あの人がやってきたのは。

「、、、!お前、もしかして、、、?」

こっちを見たあの人はそう言った。

覚えててくれてたの?

胸が、ぎゅっと締め付けられるのを感じた。

数秒後に自分の目から溢れでた、暖かい何かを

止めることはできなかった。