その数週間後。
西崎は教室である一言が耳に飛び込んできた
クラスメイト──いじめっ子の会話だ
正直聞きたくもないが、明らかに狙っているように
自分の席の近くで話されてはどうしようもない。
荒水は欠席で、席を立っても行く場所がないのだ。
二人のうち一人が興奮して声を高くする
西崎は少し興味を持ちかけた
のが、間違いだった
自分の心臓が張り裂けそうなほど高鳴った
ドクン、と一つ一つの鼓動が身体中に響き渡る
意図せず言葉がこぼれ落ちた。
それを聞いたのか、二人はより声を張り上げて会話をする
間違いなくそれは自分に言っているようだった
教室の騒がしさも少しずつ薄れていき、
最終的には静かになってしまった
西崎は顔を伏せることしかできなかった
仮にスタッフがその「謝罪文」とやらを投稿しているのなら、
これは本人達にも少なからず影響は受けているだろう。
なんなら崖っぷちにいるかもしれない状況だ
弱々しく言葉が出てしまった
それをたまたま男子が聞いていたらしい。
西崎は途端に髪の毛を掴まれ、咄嗟に顔を上げる
次は胸ぐらを掴まれる
どこか邪悪な笑みも浮かんでいた。
グイッと顔を近づけられる
明らかに周りもザワザワ興奮しているようで、西崎は完全に独りだ
こんな時、荒水はいない。
最後のトドメかのごとく、耳元に口を近づけて
そう囁かれた。
西崎は涙ぐんでいた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。