──あなたッッ!!!
──家を勝手に逃げて何やってんだ!!
──おめぇらは誰だよ
ここは間違いなく”彼“の家の前
_____なんで父親が?
︎︎
︎︎
──なんだと?
父に反抗しようと前に出るのは
野田
武田
桑原
…3人
殴りかかろうとする父
必死に庇おうとはするが
すぐに抑えられて
その握り拳は
野田の腹部に強く当たる
やめて
やめて
止めないで
私を止めないで
もう家に帰るから
──死ねッッッ!!!!!
手に持っている物はなに?──
……腕,血出てる
──ナイフ?
無理矢理武田の腕を離して野田に近づく
──ナイフで深く刺されたのを大変痛がっている
︎救急車を呼ぼうと立ち上がると
すぐに止める
ファンのことばっかり気遣って.
──帰るぞ,あなた
すぐに引っ張り出される
.
思いっきり上半身を起こす
……だが,今見える景色は玄関ではない.
あの“お客さん用の部屋”だ
汗と涙でごちゃごちゃになっている西崎
部屋の時計は朝5時
──どうやら夢だったみたいだ
“洋次郎さん”
名前をろくに呼んだことがなかった
…なんと惨い夢だったんだろうか
これが正夢にならない事を祈るばかり
目もすっかり冴えてしまった
ゆっくりゆっくり立ち上がるが,
床で寝たせいで腰がヒリヒリ痛む
壁にもたれながらドアをそっと開ける
音を立てないように静かに
やはりまだ自分以外は睡眠中のよう.
とても静まり返った家のキッチンに行く
この部屋がどこか落ち着く
室内は外の明るさもあり真っ暗で,電気をつけないとほとんど見えない
材料はある程度揃っているが,使っていいのかは分からない
「うーん」と考え込む
──すると,リビングの方からスロー再生のように遅いテンポの足音が聞こえた
︎
家の家主が起床してきたようだ
目を擦りながらも答える野田
…このまま料理させたら間違いなく包丁で手を切る
そう察した西崎はすぐに料理に取り掛かる
──今ある食材で作れる料理…
とりあえず味噌汁か?
冷蔵庫の中の味噌を手に取りながら告げる
「ほんと〜?」と子供らしく問う
寝ぼけてたら余計子供っぽくなるのか?この人
少し可愛らしく思えたのは内緒に.
身長差約20センチの男性をリビングに押して連れていこうとする
…けど,力なしの女には1ミリも動かせっこない
キャッキャと遊んでいるように無邪気
こっちは朝からこんな巨体男に力注いでるのに…
一瞬そう思ったが,野田の笑顔にこちらもつられていく
野田が嬉しそうにこちらを見る
今のは作り笑いでもなんでもない
──本当の笑顔だ
正直自分でも驚いているよう
___いつぶりだろう,心から笑えたのは.
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。