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2020/05/24

第18話

もう逃げない
【春side】

美月ちゃんが倒れた日から、
1週間が経った。
結城 春
結城 春
連絡しても返事ないし、
病院に行っても門前払い。
美月ちゃん、なにがあったんだよ……
授業の合間の10分休憩。

俺が机に突っ伏していると、
前の席の誠が振り返る。
宮田 誠
宮田 誠
病院に1週間も入院してるなんて、
絶対に普通の体調不良じゃない
結城 春
結城 春
そういえば俺、美月ちゃんと
病院で会ったことがあるんだよな
宮田 誠
宮田 誠
もし彼女が大きな病気にかかって
たとしたら、春はどうするの?
結城 春
結城 春
え……
ガツンッと殴られた気分だった。

頭が真っ白になっていると、
誠は厳しい顔つきで告げる。
宮田 誠
宮田 誠
彼女は学校も休みがちだった。
ありえない話じゃない
結城 春
結城 春
そんな、まさか……
(信じたくない、そんなこと)
宮田 誠
宮田 誠
あくまで想像でしかないけど、
彼女が春を拒むのは、春に覚悟が
足りないからじゃない?
結城 春
結城 春
覚悟?
宮田 誠
宮田 誠
なにを知っても、拒まれても、
彼女に向き合う覚悟。春はまだ、
相手を傷つけないか、嫌われないか、
そんなこと考えてない?
結城 春
結城 春
……!
宮田 誠
宮田 誠
保身的なうちは、きっと彼女との
間にある壁も壊せない
(俺は……美月ちゃんのことより、
自分が可愛かったってことか)
結城 春
結城 春
最低だな、俺
(拒まれたら、傷つきたくないからって、
のこのこ帰ってきて……)
結城 春
結城 春
弱虫にも、ほどがあんだろ
(押しに弱い美月ちゃんのことだから、
いつか通ってるうちに会ってくれるかもなんて、
甘えた)
結城 春
結城 春
これじゃ、あのときと同じだ
中学1年のとき、彼女を守れなかった自分。

そこから少しも成長できていない。

あの日、彼女から責められた俺は、
向き合うことから逃げた。

(俺といたら不幸になる。
なら、別れた方がいいって、
そう自分に言い聞かせて……)

(本当は、また拒絶の言葉を聞くのが
怖かった)

(だから、あたかも相手のためを装って、
俺は自分から大切な人を手放したんだ)

(もう、手放してたまるか。
美月ちゃんだけは、失いたくない)
宮田 誠
宮田 誠
自虐はあとでしなよ。
それよりも、早く会ってきな
結城 春
結城 春
ああ、学校早退する。
ありがとな、誠
俺は鞄を肩にかけると、
仮病で学校を早退した。

***

そうして意気込んで病院に行くと、
案の定……。
お母さん
お母さん
せっかく来てくれたのに、
ごめんなさいね。美月、体調が悪いから
会いたくないって言ってるの
(これは想定内だ)

お母さんの申し訳なさそうな顔と口ぶりに、
美月ちゃんは体調が悪いから
会いたくないのではなく、
俺に会いたくないのだと悟る。

(美月ちゃん、こっちが近づきすぎると、
急に距離を取ろうとするからな)

大事なものを作るのを
怖がっているかのように──。
結城 春
結城 春
お母さん、すみません。
でも、このまま会わずにいたら、
美月ちゃんはずっとひとりで
寂しい思いをしてるような気がして……
お母さん
お母さん
春くん……
結城 春
結城 春
逃げたくないんです。
大事な女の子だから、
向き合いたいんです
そう言い募れば、お母さんは困ったように笑って、
病室の番号を教えてくれた。

俺はお辞儀をして、
美月ちゃんのもとへと走る。

(待ってて。俺が必ず、美月ちゃん
の心の扉、開いてみせるから──)

***

【美月side】

(会えないって、
言ったはずなのに……)
???
???
俺、美月ちゃんが抱えてるものを
全部知りたい。だから、美月ちゃん
の内側に俺も入れて
扉越しに聞こえてくる声に、
目元が熱くなる。

(春……)

胸に込み上げてくるのは、
嬉しさと苛立ち。
泉沢 美月
泉沢 美月
なんで……帰ってよ。
会いたくなんか、ない
私はそう言いながらも、
怠い身体を引きずって、
病室の扉の前に立つ。
結城 春
結城 春
俺が嫌いだから、
突き放したいって言うなら、
引き下がる
(え……)

春の言葉に、心臓を鷲掴みに
されたような痛みが胸に突き刺さる。
結城 春
結城 春
だからちゃんと、嫌いって言って。
それを聞いたら、もう会いに
来ないって約束するから
(もう、会いに来ない?)

自分から会いたくないって言ったくせに、
私はショックを受けていた。

(私、心のどこかで……。
春はどんなに突き放しても、
私に会いに来てくれるって、そう思ってたんだ)

甘えていた自分が、心底嫌になる。

(でも、縛りつけたくない。
未来のない私に)
泉沢 美月
泉沢 美月
ううん、本当は違う……
(離れたくないんだ。
その気持ちを偽ってた)
泉沢 美月
泉沢 美月
傷つけるってわかってても、
私……私……っ
結城 春
結城 春
聞かせて、美月ちゃん。
本当の気持ちを──
泉沢 美月
泉沢 美月
私、春のそばにいたい、よ……
絞り出すようにそう言って、
目の前の扉に手をつく。

すると──。
結城 春
結城 春
俺も離れたくない。好きだ