なぜだか知らないけれど、
春とゾンビから世界を救う羽目に
なった私は……。
(たしかに)
なんだかんだゲームにはまっている
自分がいる。
(ああ、楽しいな)
そう思ったとき、
ぎゅううっと春に抱きしめられる。
耳元で囁かれて、思考が停止する。
そのとき、画面には
【GAME OVER】の赤文字が出た。
(あ、死んじゃった)
私から少しだけ身体を離した春が、
いたずらな笑みを浮かべる。
その瞬間、心臓が大きく跳ねて息苦しくなった。
(なに、これ……)
私が胸を押さえていると、
春に顔を覗き込まれる。
春はおかしそうに笑う。
(春って、こんなふうにも笑うんだな。
いつもは、すかしてる笑い方だったのに、
今は……)
無邪気という言葉がしっくりくる。
はっきり言えば、
春はお腹を抱えて笑い出す。
春の手が伸びてきて、
私の髪を一房すくうように握る。
急激に鼓動が早まる。
(なんか、さっきから心臓がおかしい)
私は春の視線から逃れるように、
俯く。
春に手を握られて、
私は頷くので精一杯だった。
***
ふたりで川沿いの遊歩道を歩く。
夕日が作った私と春の影は、
寄り添うように地面に映し出されていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。