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第1話

余命1年
──高校2年生、4月。
病院の先生
病院の先生
美月ちゃんの余命は……
1年です
頭をガツンッと殴られたような
衝撃が走った。

隣でお父さんとお母さんは息を
詰まらせ、そのすぐあとに唇から
こぼれるような嗚咽が聞こえてくる。
お母さん
お母さん
ほ、他の治療法はないんですか!
私の膵臓に病気が見つかったのは2年前。

切除できない部分に腫瘍が見つかり、
手術ができなかった私は、
これまで薬による治療を行ってきた。

いったんは治ったと思われたのに、
今日、進行した状態で再発を告知されたのだ。
病院の先生
病院の先生
治療はできます。
ただ、そこからの完治は……
残念ながら、厳しいでしょう
(予想していなかったわけじゃない。
この2年、心の中で覚悟はしてた)
泉沢 美月
泉沢 美月
……お母さん、私……
お母さん
お母さん
お母さんの膵臓をあげるからっ、
だから大丈夫よっ
お母さんは私を抱きしめて、
そのまま泣き崩れる。

(ごめんね、ごめんねっ、お母さん。
病気になんかなって……っ)
泉沢 美月
泉沢 美月
お母さん、ありがとう
涙が滲んでぼやける視界の中、
私はお母さんを見上げる。
泉沢 美月
泉沢 美月
でも、もう治療はしない
自分でも驚くくらい、
はっきりとその言葉が口から出た。
泉沢 美月
泉沢 美月
私は残りの時間、
病院じゃなくて、お母さんと
お父さんのそばにいたい
お母さん
お母さん
美月……
泉沢 美月
泉沢 美月
学校に行って、勉強して……。
ただ普通の日常を送りたい
お母さん
お母さん
そんなっ、ダメよ!
あなたは、まだ若いのに……っ
お父さん
お父さん
やめるんだ
泣き叫ぶお母さんを止めたのは、
瞳を潤ませたお父さんだった。
お父さん
お父さん
薬の副作用で苦しんできた
美月を見ただろう
お母さん
お母さん
それは……っ、
でも、美月はまだ17なのよ!?
お父さん
お父さん
そんなことはわかってる!
お父さんは声を荒げると、
目頭を押さえて、鼻をすすった。

(お父さん……)

私が病気になってから、
お父さんが泣いたところを見たのは、
これが初めてだった。
お父さん
お父さん
でも、残り少ない美月の時間を
ベッドに縛りつける権利は誰にもない。
親でさえ、な
希望を捨てるなと、
お父さんはいつも私とお母さんを
励ましてくれていた。

でも、もう手立てがない。

そうわかって、お父さんの強がりも、
限界が来たのかもしれない。
泉沢 美月
泉沢 美月
ふたりとも、本当にありがとう。
あともう少しだけ、私のわがままに
付き合って?
お母さん
お母さん
ううっ、あと少しだなんて……っ、
言わないで。大丈夫、ずっとずっと
一緒にいられるはずよ!
自分に言い聞かせるように
そう言ったお母さんは、
私を抱きしめる腕に力を込めた。

そんな私とお母さんを、お父さんは
無言で抱き寄せるのだった。

***
泉沢 美月
泉沢 美月
……ふう
息をつきながら、
私はひとりで診察室を出る。

お父さんたちは、先生から
まだ話を聞いている。

私は気分転換をさせてもらいに、
病院の出口を目指して歩いていた。
泉沢 美月
泉沢 美月
これで、よかったんだよね?
掠れるような声で呟く。
薬の副作用はきつい。

なにより、髪が抜けたことが
辛かった。

今、私の髪はロングだけれど、
これはウィッグだ。

これを取れば、この1年半で
奇跡的に生えてきたベリーショート
の髪がある。

どうしてもロングにしたかったのは、
病気になる前の私の髪がそうだったから。

取り戻したかったんだ、
病院になる前の私を、日常を──。
???
???
あれ? 
きみ、どっかで会ったことない?