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第6話

八つ当たりのキス
春は弾かれるように私を見た。

わかりやすいくらい瞳を揺らして、
動揺しているのが見て取れる。

(ああ、どっちもか。
もしかしたら昔、自分の好きな子が
ファンの子に傷つけられたりしたのかも)
泉沢 美月
泉沢 美月
なんにせよ、無理してるの苦しくない?
どうでもいい人間に好かれようと
しなくていいのに
結城 春
結城 春
…………
泉沢 美月
泉沢 美月
大事な人は、
傷つけられないように守ればいい
結城 春
結城 春
……なにがわかんだよ
低い声でそう言った春が、
私の後頭部に手を回して、
乱暴に引き寄せた。

(え──)
泉沢 美月
泉沢 美月
んんっ!
唇に温かい感触。

これがキスだと気づいた頃には、
春が顔を離していた。
結城 春
結城 春
ムカついたから、味見
春は自分の唇を舐めると、
挑発するように私を見る。

泉沢 美月
泉沢 美月
最低……
私は唇を制服の袖で、ごしごしと拭うと、
春を真っ向から見つめる。
泉沢 美月
泉沢 美月
図星を指されたからって、
人の嫌がることして、子供みたい
結城 春
結城 春
そっちが人の触れられたくないことに、
土足で踏み込んできたんだろ
泉沢 美月
泉沢 美月
人生、いつ終わるかわからないんだよ。
それなのに、なにかを我慢して
生きるなんてもったいない
結城 春
結城 春
偉そうに。
俺がどう生きようが関係ないだろ
そう言い捨てると、
春は図書室を出ていく。

(お節介が過ぎたな。
なんで、私……ムキになって
言い返しちゃったんだろう)
泉沢 美月
泉沢 美月
これじゃあ、
私の考えを押しつけただけ
ただ、残り時間が少ないからこそ、
知ってほしかった。

終わりというのは、
ときに突然にやってくる。

終わりが見えてから自分のために
生きようとしても、
大したことは成し遂げられない。
泉沢 美月
泉沢 美月
だから、今のうちからしたいことして、
生きたほうがいいんだよ
***

【side春】

放課後──。

(なんなんだ、あの子)

泉沢 美月。

綺麗なのは顔だけ、
性格は最悪だった。

俺はイライラしながら、
帰るために廊下を大股で進む。
ファンの女の子1
ファンの女の子1
なんで彼女作ったの?
ファンの女の子2
ファンの女の子2
付き合うなら、
ファンクラブから順番って
言ったじゃん
すると、ファンクラブの女の子たちが
周りを包囲してきた。

(うざ、なんで俺の彼女を
こいつらが決めんの?)

そんな風に考えて、俺ははっとする。

(なんだよ、それ)

(今までの俺なら、穏便に済ませるために
仕方ないことだって、そう割り切ってたはずだろ)

そのとき、頭の中にあいつの声が響く。
『どうでもいい人間に好かれようと
しなくていいのに』

『大事な人は、
傷つけられないように守ればいい』
(余計なお世話だ。
そんなことができるなら、してるっつーの)

また腹が立ってきて、
俺は前髪をぐしゃりと握る。

(でも、仕方ないだろ)

俺は昔、好きだった女の子を守れなかった。

こういう、うざったいファンから
虐められて、あげく──。

『私がこんな目に遭ったのは、
春くんのせいだから!』

(そんなふうに泣きながら訴えられたら、
トラウマにもなるだろ)
ファンの女の子3
ファンの女の子3
ねえ、春ってば。
聞いてるの!?
結城 春
結城 春
ああ、ごめん
この状況を理不尽だと思いながらも、
受け入れている自分に嫌気が差した。

そのとき──。