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2020/06/07

第20話

永遠の想い
春はそう言って、
また私にキスをする。
結城 春
結城 春
甘い
泉沢 美月
泉沢 美月
ケーキ、がね
結城 春
結城 春
違うよ、美月ちゃんが
そう言って、何度も何度も唇を重ねた。
結城 春
結城 春
忘れない。美月ちゃんとのキスも、
甘さも、可愛さも、全部
切なげな声が耳に届き、
私は自分の存在を刻むように、
自分からも春に口づけた。

***

【side春】

クリスマスから3日。

【美月が危篤になった】

そう美月ちゃんのお母さんから
連絡を受けた俺は病室に飛び込む。
結城 春
結城 春
美月ちゃん!
お母さん
お母さん
間に合ってよかったわ。
心臓は動いてるけど、もうじき
止まるんですって……
お父さん
お父さん
だから春くん。
どうか娘に声をかけてあげてほしい。
きっと……っ、喜ぶと思うから
言葉を詰まらせたお父さんに、
俺も息を詰まらせる。

(覚悟なんて、美月ちゃんが病気だって
わかってからもできなかった)

ついに、この日が来てしまったのだと
絶望する。
結城 春
結城 春
は、い
なんとかそう答えて、
俺は酸素マスクをつけている美月ちゃんの前に立つ。

治療の副作用で一度抜けて、
ようやく生えてきたという髪。

その前髪には、
俺のあげたヘアピンがついていた。

(俺を、美月ちゃんが受け入れて
くれている証……)

偽装ではなく本当に付き合うようになってから、
美月ちゃんは毎日つけてくれていた。
結城 春
結城 春
美月ちゃん、美月ちゃん。
……っ、これ見て。指輪、
プレゼントだよ
本当はクリスマスに渡したかった。

けど、本人が一緒にお店に行ける
わけではないので、サイズ調整で
手間取ってしまい、完成が遅れてしまった指輪。

俺はそれを美月ちゃんの左手の
薬指にはめてあげる。
結城 春
結城 春
一度でいいから、
目を、目を開けて……。
俺のこと、見てよ……っ
震える声で呼びかけながら、
引き裂かれそうな胸の痛みに耐えながら、
俺は美月ちゃんの手を握った。

そのとき──。
【美月side】
結城 春
結城 春
一度でいいから、
目を、目を開けて……
どこからか、大好きな人の泣きそうな声がする。
結城 春
結城 春
俺のこと、見てよ……っ
(春……?
泣かないで、お願いだから──)

私は力を振り絞り、瞼を持ち上げた。

霞む視界の中、ぼんやりと見えるのは……。

(春だ……)
結城 春
結城 春
美月ちゃん!?
俺の声、届いたの?
(届いてたよ)

そう言葉で伝えたかったのに、
声は出なかった。

抱きしめてあげたいのに、
指ひとつ身体は動かない。

だから私は、じっと春を見つめる。

すると思いが通じたのか、
春は泣き笑いを浮かべた。
結城 春
結城 春
ありがとう。
俺と出会ってくれて、
一緒にいてくれて……っ
涙をボロボロとこぼしながら、
春は精一杯、笑おうとする。

(それは私のセリフだよ。
私に恋をくれて、誰かを愛しいと
思う感情をくれて、ありがとう)
結城 春
結城 春
好きだ。大好きだ。愛してるっ。
伝えきれないから、だから──
春は先生の許可をもらって酸素マスクを外すと、
私の唇に口づける。
結城 春
結城 春
次に会えたそのときは、
俺の生涯をかけて、美月ちゃんの
こと、幸せにするからっ
(次に会えたら……。
そう思うと、眠るのが怖くないや)

悲しいけど、それ以上に嬉しくて、
私の目尻から涙が流れた。
結城 春
結城 春
愛してる……、おやすみ……っ
また触れ合う唇。

あたたかな感触に導かれるように、
私は目を閉じる。

(幸せだった)

(短くても、価値がある人生だった)

(春、あなたが私の命に、
意味を見出してくれたんだよ)

(愛してる……)

私は唇を動かす。

声は出てない。

けど、唇を重ねていた春には
わかったみたいだった。
結城 春
結城 春
俺もだよ……っ
唇を重ねたまま、
春はそう言った。

(ありがとう)

(またね、春──)

***

【春side】

美月ちゃんのお葬式は、
俺の心とは裏腹に快晴だった。
宮田 誠
宮田 誠
春、泉沢さんのことは……
葬式会場の広場で、
ひとり空を見上げていた俺のところへ
誠がやってきた。
結城 春
結城 春
今でもさ、実感がわかないんだよな
(美月ちゃんがこの世界のどこにも
いないだなんて、誰が信じられる?)

俺は美月ちゃんとお揃いのペアリングを
はめた左手を、自分の額に押し付けた。
結城 春
結城 春
でも、触れたい、抱きしめたい、
声が聞きたいって思っても、
どこを捜しても美月ちゃんが
いなくて……っ
勝手に、涙がこぼれて頬を伝う。
結城 春
結城 春
俺はっ、美月ちゃんのいない
世界で、どう生きればいい?
答えの見つからない問いを吐き出す。

すると誠が、震える俺の背に手を添えてくれた。
宮田 誠
宮田 誠
春は、泉沢さんに
大事なものをもらったんだな
結城 春
結城 春
……?
宮田 誠
宮田 誠
誰かを痛いくらい好きになる
気持ち。たったひとりを愛する心。
春にずっと欠けてたものだ
結城 春
結城 春
あ……ああ、そうだ、な
宮田 誠
宮田 誠
なら、泉沢さんの言葉を
思い出してみればいい。
その答えを彼女なら、
春に残してくれてると思うよ
(美月ちゃんの言葉……)

『人生、いつ終わるかわからないんだよ。
それなのに、なにかを我慢して
生きるなんてもったいない』
結城 春
結城 春
美月ちゃんなら、今の俺を見て
『悲しんでばっかでもったいない』
って言いそうだな
美月ちゃんの言葉を思い出してふっと笑うと、
誠も笑みを浮かべる。
宮田 誠
宮田 誠
答えは見つかった?
結城 春
結城 春
ああ、だから我慢せずに言うわ
宮田 誠
宮田 誠
え?
目を丸くする誠に笑いながらも、
俺は顔を上げる。
結城 春
結城 春
俺に本気の恋を教えといて、
先に逝くなんてずるいだろ。
最期まで敵わない。美月ちゃんには
俺は美月ちゃんに届くようにと、
ペアリングをはめた左手を
天に向かって伸ばす。
結城 春
結城 春
ずっと好きだ。
俺の永遠を美月ちゃんに捧げるよ
(ちゃんと聞いててよ、美月ちゃん)

(俺がどれだけ美月ちゃんを
好きだったのか、忘れないで)

(俺も、美月ちゃんを忘れない)

(笑顔も、たまに毒を吐くところも、
ゲームが意外と得意なところも、
本当は泣き虫なところも、全部──)

目に涙がたまり、ぼやけた視界の中……。

口元が自然と緩んでいくのを感じながら、
俺は声を張る。
結城 春
結城 春
そこで待ってて! 俺がそっちに
逝くまで、浮気すんなよな!
そう口にしたとき──。

『春のバカ』

そんな彼女らしい悪態と笑い声が、
澄み切った青空から聞こえた気がした。

END