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2020/05/31

第19話

私の時間をあなたにあげる
ガラガラッと目の前の扉が開き、
春が私を抱きしめる。

そのまま、ふたりで病室の床に座り込んだ。
泉沢 美月
泉沢 美月
春、私……っ。
春に話さなきゃいけないことが
たくさんあるのっ
結城 春
結城 春
全部聞かせて。
俺にも背負わせてほしい。
美月ちゃんの抱えてるもの
私は春の腕の中で、
ぽつりぽつりと自分の病気のことを話した。

全て話し終えると──。
結城 春
結城 春
俺、なんて言ったらいいのか、
わかんねえ
春は泣いていた。

私を抱きしめたまま、
「嘘だろ」を繰り返して。
泉沢 美月
泉沢 美月
大事なものを作りたくなかったのは、
大切な人との別れが辛かったから。
だから春、私から離れたくなったら、
いつでも言ってね
結城 春
結城 春
なに言ってんだよ。
離れないっつーの。
美月ちゃんの残りの時間、
俺に全部ちょうだい
春は私の手を握り、真剣な顔で懇願してくる。
結城 春
結城 春
俺の中に、美月ちゃんの存在を
刻み付けてよ
泉沢 美月
泉沢 美月
それって……
『恩を売って、私という存在を
春に刻むため』

なんで彼女役を引き受けたのかって
春に聞かれたときに、
私が返した答えと同じ……。
泉沢 美月
泉沢 美月
はは、春ってどこまでも強引
結城 春
結城 春
でも、受け入れてくれるんでしょう?
美月ちゃんは
泉沢 美月
泉沢 美月
うん。……春
私は春の瞳を真っ直ぐに見つめる。
泉沢 美月
泉沢 美月
好き。大好き
結城 春
結城 春
み……づき、ちゃん……
泉沢 美月
泉沢 美月
私の最初で最後の恋。
春にもらってほしい
そう言った途端、
荒々しく春に唇を奪われた。

(大好き)

そう思ったら気持ちは抑えられなくなって、
私は心に決める。

(私の残りの時間は、
春を幸せにするために使おう。
それがきっと、私の生きる意味だから──)

***

春と心が通じ合った日から、
あっという間に数カ月。

私は迎えられないだろうと
言われていた冬を迎えることができた。
結城 春
結城 春
美月ちゃん
私は朦朧とする意識の中、
大好きな彼の声で目を覚ます。
泉沢 美月
泉沢 美月
は、る……?
先生の言った通り、
私の腫瘍は大きくなり、
背中とお腹の痛みは我慢できないほど強くなった。

そのため、強い痛み止めを使うことに
なったのだけれど、
作用が強すぎて眠ってしまうことが増えていた。

(でも、不思議と……。
春の声が聞こえると、
意識がはっきりするんだよね)
結城 春
結城 春
お父さんとお母さんが、
ふたりきりにしてくれたんだ。
部屋の中、見て
(部屋の中?)

私は身体が怠くて動かせなかったので、
春に支えられながら部屋を見回す。

すると、壁にはキラキラと光る電飾、
クリスマスツリーも飾られている。
泉沢 美月
泉沢 美月
きれ、い……
結城 春
結城 春
前にクリスマスらしいことする
のが目標だって、言ってたでしょ
(そういえば……)

『イルミネーション見に行ったり、
ケーキ食べたり、クリスマスらしい
ことできたらいいな』
泉沢 美月
泉沢 美月
覚えてて、くれた……んだ
胸がじんとして、
私の目から、ぽろっと涙がこぼれる。

(もっと、春といたい。
どうして、そんな平凡な願いが、
叶わないんだろう)
泉沢 美月
泉沢 美月
うっ……ふ、う
結城 春
結城 春
美月ちゃん、大好きだ
私が悲しみに引きずられそうなとき、
春はいつも抱きしめてくれる。
結城 春
結城 春
今日はクリスマスだからね。
ケーキもあるよ。俺の手作り
そう言って春が箱から取り出したケーキは、
すごく不格好で……。
泉沢 美月
泉沢 美月
ふふっ
結城 春
結城 春
これでも頑張ったのに笑うなんて、
ひどいなー。ま、美月ちゃんが
笑ってくれたからいっか
春はそう言って、私に口づける。
結城 春
結城 春
大好き、可愛い、俺の天使
泉沢 美月
泉沢 美月
もう……バカ発言やめて
結城 春
結城 春
俺をバカと言ったのは、
その口か
春はフォークを握ると、
私の口にケーキを入れる。

舌の上でふわっと甘みが広がり、
私は笑った。
泉沢 美月
泉沢 美月
味は合格
結城 春
結城 春
またそんなこと言って。
どうなっても知らないよ