第10話

春、このたび本気の恋をしました。
春が私の手を引く。
泉沢 美月
泉沢 美月
わっ──ふぐっ
突然のことに体勢を崩した私は、
顔から春の胸にダイブした。
結城 春
結城 春
俺の許可なく、触れんな
宮田 誠
宮田 誠
泉沢さん
結城 春
結城 春
俺のことは無視かよ
宮田 誠
宮田 誠
どんな種類の大切かは別として、
まだ自分が春の大切なものに
含まれないって思う?
泉沢 美月
泉沢 美月
……まだ、わからない。
それに、大切になったら困る

(私は近い未来に、
この世界から消えるのに……)
結城 春
結城 春
ちょっと待って。
話が読めないんだけど。
説明してくれよ
宮田 誠
宮田 誠
春にとって泉沢さんが、
大切な人なのかどうか、確かめた
結城 春
結城 春
は?
宮田 誠
宮田 誠
泉沢さん、自分は春にとって、
取るに足らない存在だって、
思ってるみたいだったから

(そこまでは言ってないけど……。
でも、違いないか)
結城 春
結城 春
んだよ、それ
宮田 誠
宮田 誠
春がゲーム感覚で女の子と
付き合ってたつけが回ってきた
んじゃない?
結城 春
結城 春
……そうだな。
だったら、教えてやるよ
春は私の肩にかかっていた
ブレザーを宮田くんに押し付けるように返す。

そして、私の手を引き、
宮田くんの横を通り過ぎて、
そのまま教室を出た。
泉沢 美月
泉沢 美月
ちょっと春!
いきなり来て、宮田くんにあの態度は
ないんじゃない?
結城 春
結城 春
誠の名前、今は呼ぶな。
つーか俺、今すげえムカついてん
だけど、なんでかわかる?
泉沢 美月
泉沢 美月
知らないよ!
とにかく、離して

ずんずんと、どこかへ向かう春は、
1度だけ私を振り返って、べーっと舌を出す。
結城 春
結城 春
嫌だね
泉沢 美月
泉沢 美月
は、はあ?
結城 春
結城 春
俺も、こんな感情知らなかった。
誠が美月ちゃん抱きしめてるとこ
見たら、頭おかしくなるかと思った
泉沢 美月
泉沢 美月
なんの話をして……
結城 春
結城 春
嫉妬、したんだよ。誠に
美月ちゃんが触られてるの見て
泉沢 美月
泉沢 美月
え……
結城 春
結城 春
これって、俺にとって美月ちゃん
が大事ってことだろ?
泉沢 美月
泉沢 美月
そんなこと、私に聞かれても……
結城 春
結城 春
俺にもわかんねえけど、
たぶんこれ……
春は自分の着ていたブレザーを
私の肩にかけてくれる。
結城 春
結城 春
恋だ
泉沢 美月
泉沢 美月
冗談?
結城 春
結城 春
んなわけねえだろ
いつものおちょくるみたいな口調が、
男らしいものに変わる。

(これが春の素なのかな?
なんにせよ……)

泉沢 美月
泉沢 美月
冗談じゃないなら、
偽装彼女はここで終了
結城 春
結城 春
なんで……
泉沢 美月
泉沢 美月
最初に約束したでしょ。
私が解消したいと思ったら、
解消するって
結城 春
結城 春
だから、なんでこのタイミング──
泉沢 美月
泉沢 美月
春が本当に、
私を好きだって言うから
結城 春
結城 春
意味がわからな──。
あー、いや、いい。
今のなし、俺の気のせいだった!
泉沢 美月
泉沢 美月
う、うん?
私をからかったの?
結城 春
結城 春
そう、だから彼女は継続な
そう言って、私の背をぐいぐいと押す。

すると、いつの間にか1階の保健室に
やってきていた。
結城 春
結城 春
ジャージに着替えてきな
***

【春side】

美月ちゃんが保健室に入ったあと──。
結城 春
結城 春
……はあ
目の前で閉まった扉を見つめながら、
ため息をつく。

(俺が美月ちゃんに恋したら、
なんで偽装彼女解消になるんだ?)
結城 春
結城 春
意味わかんねえ