あれから拓磨くんの様態は悪くなる一方だった
また集中治療室に戻っての治療が始まった
寝ている拓磨くんに話しかける
機械音が激しくなっていく
すぐにほかの看護師などが来て処置を始める
--------キリトリ線--------
17年間ずっと拓磨くんの担当医だった
17年間も一緒にいたら...涙なんか止まらない
拓磨くんの使ってた病室の引き出しを開くと愛ちゃん宛の手紙が入ってた
少し早足で愛ちゃんの病室に行く
--------キリトリ線--------
先生はスマホのフォルダーから写真を見せてくれた
涙がまた沢山溢れてきた
写真の中の拓磨くんは笑ってたけど何処か、とても悲しそうだった
まなが覚えてないことでどれだけ悲しませたんだろうッ
--------キリトリ線--------
愛へ
俺の事、きっと覚えてないよね。愛はいつの日か俺に言ってくれたんだよ。生きて欲しいって、初めてだった誰かから生きて欲しいって言ってくれたの。何回も死にかけて何回も病気にかかったけどこの16年間誰も言ってくれなかった。バンドの仲間も、家族も。誰も。だから愛の記憶には残れないけど、愛の中に残れたらいいなって、それだけで幸せだなって思った。俺は、愛の中に残れたかな。ろくな人生じゃなかった、でも愛のおかげで毎日が楽しくなった。愛のおかげで諦めなかった。沢山遊ぶって約束も守れなくてごめんね。何一つ愛にしてあげられなかった。ごめんね、でもね。ありがとう。ありがとう。感謝してもしきれないよ。何回ありがとうって言っても足りないぐらい。ほんとにありがとう。愛は幸せな人生を送ってね。きっと近くに居ると思うから、ひとりじゃないよ。2人だよ、寂しくないよ。またあう日までばいばい。
拓磨より
手紙を見終わって愛の方に目を向けると隣で笑ってる拓磨くんが居た
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。