第3話

苦しさ
54
2021/05/15 11:00
抗がん剤の治療が始まった
拓磨
うっ……おえッ…
何回も何回も吐いた
大丈夫?
拓磨
うん…
拓磨
ごめん、寝るね。
苦しい
辛い
いい夢見るといいね
そう言ってカーテンをしてめくれた
少し上に目を向けると家族の写真が目に入る
手に取ってぎゅっとする
捨てられたくない
嫌われたくない
忘れられたくない
やだよ。














--------キリトリ線--------
うっすらと目を開ける
カーテンの向こう側から話し声がする
拓磨
ゲホゲホッ!ゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ...!
医者
拓磨くん?!
拓磨
ぁ……
医者
やっぱり拓磨くんには抗がん剤はダメだよ。
医者
抗がん剤のせいで死んじゃうよ?
拓磨
………
俺が無理言ってして貰ってるんだ
やっぱり……そうなんだ。
拓磨
…ッ
医者
やめよう?
拓磨
わかりましたッ……
なんでこんな体なんだろ
拓磨
ちょっと…外に行ってきます。
医者
大丈夫?体調悪くない?
拓磨
大丈夫です。
スマホを持って外に出た













--------キリトリ線--------
いつものベンチに来て座る
さっき送ったメールを見ると既読がついてたけど返信がなかった
拓磨
やっぱり…見捨てられてるじゃん…
もう退会しよう
拓磨
はぁ……
死にたくないのに消えたい
少し遠くに見える下校する学生
小学生も中学生も高校生も
みんな楽しそう
中に、元友達もいた
拓磨
ッ……
4人の中に1人別の人がいる
拓磨
もう見つけたんだッ…
本当ならあそこの中に俺がいるはずだった
悔しい…悔しいッ…
どうして何も出来ないんだろっ…
拓磨
置いてかないでッ……
置いてかないよ?
拓磨
えっ…?
泣いてる
後ろを向くと愛ちゃんがいた
どうして、すぐ諦めちゃうの?
拓磨
諦めるしかないから
どうして?
拓磨
病気だから
拓磨くんは直ぐに病気のせいにするね
拓磨
本当じゃんかッ…
置いていって欲しくなかったら追いかけなきゃ
拓磨
……追いかけられないッ
拓磨
無理なんだよッ……
拓磨
俺になんかッ……
バカ……
俺になんかって言うから
怖くなってなんも出来なくなるんだよ
未来なんか誰も知らないんだよ、だから頑張ってよ
拓磨
………
まなは拓磨くんに生きて欲しい!
やっぱり…頑張ってみるものなのかな
諦めなくていいのかな
拓磨
頑張るッ……
良かったッ…
ほら先生の所に行こ
拓磨
うんッ













--------キリトリ線--------
医者
はぁ…ほんとにいいんだね?
拓磨
はい
拓磨
もう…諦めないです
抗がん剤で逆に命を縮めても、頑張った事だけはちゃんと胸張って言える
どうせ死ぬんだ
最後ぐらい足掻いてやる
医者
そうだこれ
そう言ってチラシを見せてくる
拓磨
これ…
医者
拓磨くんのバンドのライブのチラシ
拓磨
…もう抜けました。
医者
…そっか
医者
愛ちゃんと一緒に見に行こっか
医者
何かあったら困るから俺も着いてくよ
拓磨
はい
8月17日…
今日確か7月17日
それまで頑張れるかな

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