バニーさんからの命令でミカちゃんを追いかける私。
着いた先は、私が前に働いていた会社だった。
物陰に隠れて様子を見ると、会社の様子が一目でおかしいことに気づく。
何故なら、会社の外壁には「消えろ」「最低」など誹謗中傷となることが書かれた紙が至る所に貼られていたから。
すると、私の近くにある車が停まった。それは初めてアジトに行った時に乗ったリムジン。
そこでインカムからバニーさんが、車に乗るよう言われる。
車に入ると、そこにはバニーさんと先ほど会ったリリさんがいた。
「あの、なんで会社があんなふうに?」
「SNSを見たでしょ?あれで国民の怒りが出てきたようね、ただの推測だけで怖いわ」
「あ、優斗の方はもう完結ね、もうミカって子も呆れてるだろうから」
すごい気分が晴れる、優斗のこと陥れてくれてありがとうございます。
でも問題はミカちゃん、正直擁護したのに、何故か今、その気持ちを後悔している。
バニーさんはパソコンをいじり、私たちに見せてきた。
「これは?」
パソコンに映ってたのは、見たことある風景。そこには社長だけでなく、自分を侮辱した社員たちもいる。
「ここって、会社ですよね?」
「そうよ、あのミカという女に隠しカメラ仕込んだの」
「え?いつの間に?」
「さっき私が倉庫であなたのところ行く時に」
リリさんが優斗を見て呆然と立ち尽くしてたミカちゃんに監視カメラをつけていた。
私でも気づかなかった、さすがプロだ。
カメラの映像を見てると、社長とミカちゃんが言い合っている。
『ミカ、お前どういうことだ?俺に嘘をついたのか?』
『パパ何言ってるの?』
『昨日これが届いたんだ、聞いてみろ』
社長が見せたのはUSBメモリ、パソコンに繋げて音声を流す。
その内容は、優斗とミカちゃんが私について侮辱していて、そこには私が優斗を奪ったという嘘も明らかになっていた。
というか、これもいつの間に?不思議に思ってバニーさんを見たら
「あなたの前に住んでた住所、ミシェルが引っ張り出したの、だからあなたの部屋の扉に小型の盗聴器を仕掛けたわ」
さすが情報通のミシェルさん、そこまでするくらい個人情報ダダ漏れだ。
「これをUSBメモリに入れて昨日会社の郵便受けに入れたわ」
バニーさんの話を聞いた後、またパソコンに目をやったら、社長が声を荒げ始めた。
『何てことしたんだ!それにお前らも!藤堂さんが何したっていうんだ、あんな賢明な子に対して』
『そんな子を捨てたのはパパでしょ?私別に悪くないから』
ミカちゃんは社長の前でも完全に裏の顔を出している。もうバレたら一貫の終わりという感じ。
『それはお前のためだったんだ、それがこんな大惨事、どう責任取ってくれるんだ』
『責任?私だけにしないで、こいつらもよ、朱莉虐めてたんだから、たかが女だからとか女だけで虐めたコイツらも責任取るべきでしょ』
『はあ?何言ってんだよ、あいつはあいつの意思でやめたんだ、俺ら関係ねえだろ』
『関係ない?責任から逃れるつもり?それにパパだって、朱莉が虐められてたの知ってたでしょ?』
え?
『知ってて朱莉と接してたよね?まあ朱莉は言わないから何もなかったけど、もし言ってたとしても無視したよね?だって気づいて何もしなかったんだから』
『ミカ、それは』
『結局は会社守りたかっただけでしょ?』
私も知らなかった事実。社長は最初から味方じゃなかったんだ。
「もうやめない?新人ちゃんも困ってる」
リリさんがバニーさんに言ってバニーさんはパソコンを閉じた。
「でもよかった、あなたを連れ出せて、私が貴方を見つけなかったら大変だったわ」
「え?リリさん、私を見つけたって?」
「バニーから聞いてない?サロンの話」
「あ、私が荷物届けてた店のですか?」
バニーさんが言ってた、本店のサロンで私を見つけた人がいるってこと、前にも話してた、その人がリリさん?
「そう、私はあのサロンの店長。担当はエステ、紀藤梨々香よ。今はこんな格好だけど、決してキャバ嬢とかじゃないからね」
「そうだったんですね、じゃあ、優斗に口説かれたって?」
「あれは本当、一ヶ月前だったわね、あのミカって彼女とサロンきた時に、彼女が施術してるときにね、その時からクズだと思ってたわ」
「なるほど…」
「petalの潜入捜査員としてもたまにいるわ、ここでのコードネームはリリよ、よろしくね」
まさかこんなところで会えるとは思ってなかった。リリさんは大人のオーラ漂う人で、バニーさんと並んでてもおかしくない。
茶髪のロングヘアで、今は巻いているが、お店ではお団子ヘアにしてるらしい。
「まあいいわ、これでいずれあの会社も終わり、車出して」
バニーさんが運転手さんに向かって言うと、車が発進し始めた。
でもここで疑問が、私が依頼した内容とは違う。優斗だけを陥れてとしか言ってないのに。
「バニーさん、私こんなこと頼んでないですけど」
「わかってるわ、これはサプライズよ」
「サプライズ?」
「petalに加入した歓迎のサプライズよ」
リムジンの中で優雅に座って、真っ直ぐな目で見てきたバニーさん。
その目を逸らすことができず、気がつけばアジトに着いていた。