照史君はお茶を出してくれると、座りもせず、冷たくそう言った。
場の空気が、さっきより緊張したのが分かった。
柔らかく聞く淳太君を、照史君が睨んだ。
そう言って淳太君が伸ばした腕を、照史君は振り払った。
投げ捨てるように言った照史君に、濱ちゃんが立ち上がるのが分かって、嫌な予感がした。
僕と淳太君が止める前に、濱ちゃんは照史君の胸ぐら掴んでた。
ほとんど息継ぎもせずにそう言い放った濱ちゃんの言葉が終わるのと同時に、照史君が濱ちゃんの腕を思いっきり振り払った。
そう叫ぶ照史君は、本当に苦しそうで、目から涙があふれてた。
あの時のことが、よぎる。
気付いたら、照史君に抱き着いてた。
そう言うと、照史君は僕を無理やり離そうとした。
そう言ったのと同時に突き放された僕は、押されて淳太君に支えられた。
泣きそうになりながら言うと、照史君はまた、ぽろっと涙をこぼした。
ひときわ大きな声で言われて、僕らは家から出た。
照史君、
照史君は間違ってるよ。
帰り道、お互い何も話さなくて、
涙を止められない僕の背中を、淳太君がさすってくれて、
「俺ってあほやな」って濱ちゃんはずっと落ち込んでた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。