第38話

桐山side
1,221
2018/03/30 04:42
何も考えずに帰るのとは反対の電車に乗って、しげのいる病院まで来たけど。



病院に着いた途端、怖くなった。

会うのが怖い。

鼓動が早くなる。


やっぱり帰ろうか。


もうしげの病室まで教えてもらって、エレベーターにまで乗ってるのに、まだそんなことを思ってしまう。






話って、なんやろう。



もう二度と会いたくない。

照史君のことは一生許さへん。

照史君の耳が聞こえへんのは自業自得や。


そんなふうに言われるのかな。



でも、そう言われたら言われたで、蹴りがつけられるかもしれない。




そんなこと考えてたらエレベーターのドアが開いて、僕はゆっくり廊下をすすんだ。

しげの病室に近づけば近づくほど、足取りは重くて、リュックを握る力も強くなった。



病室の少し手前で、僕は耐えきれなくなって近くにあった椅子に座り込んだ。









蹴りがつけられるとか、

これで終われるとか、



そんな簡単に考えられるほど、僕らの関係は弱いものじゃなかった。






これで終わってしまったら、


もうみんなと二度と会えなくなってしまったら、



僕はきっと、一生後悔する。




何を言われたって、

ちゃんと謝ろう。






そう思って歩き出せたのは、かなり経ってからだった。

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