あれからレッスンには1度も行っていない。
行ってどうやってみんなと顔を合わせていいのか分からない。
みんなは、本気で僕と夢を叶えたいと言ってくれた。
こんな僕と、小指を結んでくれた。
あれは嘘ではない。
なのに、
ー最初からそう思ってたんやろ
酷いこと言って、
なにより、望を過呼吸にさせといてお見舞いにも行かず、
最低な奴や。
僕は、みんなことを傷つけた。
照史君が大変なのも知ってた。
関西ジュニア全体のことで、照史君が責められているのを、何度も見てた。
自分やって嫌というほど言われてたんやから、照史君の気持ちは痛いほど分かるはずや。
第一、照史君の言葉が、ほんまに心からのものじゃないことくらい分かってた。
照史君は優しいねんもん。
照史君は、本気であんなことを言える人じゃない。
ちょっとばかし、熱いだけ。
やから、照史君のことはもう許せてた。
でも、
照史君は、
濱ちゃんや淳太君は、
望は、
僕のこと、許してくれるんやろうか。
とにかく、このままじゃあかん。
まず誰かと話さなきゃ。
そう思って1番に頭に浮かんだのは流星やった。
流星は嫌なことをすぐ忘れられるタイプの人。
言い合いになっても、冷静でいられる人。
そんな流星やから、話したいと思った。
きっと流星なら、落ち着いて話ができる。
思い切って、受話器のボタンを押した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!