ー「次に2番線にまいりますのは・・」
たくさんの人が行きかう駅。
いつもの場所で、今日も立ち止まる。
時計とにらめっこしながら、目の前を通っていく人の中から、たった一人の人を探す。
もう1カ月以上経つというのに、あれからレッスンの度こうやって探してる。
時計を見たら、もうそろそろレッスン場に向かわないと間に合わない時間になっていて、思わずため息をついた。
今日も来なかった。
でも、きっと明日は会えるやんな。
そんな期待を、僕はいつまで持ち続けられるんやろう。
諦めて改札を出ようとした時、僕は慌てて振り返った。
ついさっき着いたであろう電車から大勢の人が改札に向かってきて、その中に、ずっと待っていた人を見つけた。
溢れかえる人に飲み込まれて、しげが見えなくなってしまってなぜか焦った。
別に、改札を出た後しげを探せばいい。
今呼ぶ必要なんかないのかもしれない。
でも、
今じゃなきゃ、
二度としげと会えない気がして。
改札に行く直前で、僕はしげの腕を掴んだ。
そのせいで人の流れがおかしくなって、たくさんの人に睨まれたけど、今はそんなこと気にする余裕などなかった。
しげは睨む人に頭を下げながら振り返って、僕と目があって。
ずっと、会いたかった人。
ずっと、待ってた人。
気付いたら泣いてた。
しげ、
俺な、ずっとな、しげに会いたかってんで。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。