点滴変え終わって慌てて病室の方に行ったら、僕の病室の前で立ってる人見つけて、僕は動けなくなった。
照史君。
照史君は、ドアを開けようかどうしようか迷ってて、深呼吸してはドアに手を伸ばし、また引っ込めるのエンドレス。
久しぶりに会う照史君に緊張して、どうすればいいのか分からなくなった。
「照史君」って声かけたらええんかな。
「来てくれたんや~」って笑えばええんかな。
分からへん。
分からなくて、結局思いついたのは
迷う照史君の後ろから近付いて、照史君の目を手で覆った。
驚いた照史君は、僕の手に触れて動かなくなった。
それと同時に、目を覆った手が、じんわりと濡れて。
小さく名前を呼ばれた。
僕の手だけで、照史君は僕だって分かったん・・?
手を離そうと思ったら、照史君に強く握られていて離せなかった。
やから、頭をぽんっと照史君の背中に当てた。
言ってる途中で涙があふれて、唇を噛みしめた。
そう言った瞬間、僕を握る手が離されて、照史くんが振り向いて思いっきり頭を下げた。
違う。
照史君、違う。
泣きながらそう叫んだ。
責任?
そんなの取らなくていい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!