第66話

素直
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2023/03/25 01:40
拓が運んできたお粥を食べる。
湊斗
美味しかった
風峰
まぁ、コンビニのものだしね
湊斗
あぁ。やっぱりか
風峰
えぇ!?分かったの!?
湊斗
いつも体調が悪い時は作れる程体力ないから
風峰
そうなんだ...。じゃあ、これからは俺が作る!
湊斗
いや、作り方知ってるのか?
風峰
知らない。だから教えて?
湊斗
はぁ...体調が戻ったらな?
風峰
うん!
拓の返事を聞き、お粥が入ってた皿を置く。
湊斗
俺...寝るな
風峰
うん。おやすみ
掛け布団を被り寝ようとするが、ベッドに座っている拓を見て、1つの我儘が頭に過ぎる。拓の裾を引っ張る。
風峰
ん?
湊斗
帰る...?
風峰
んーん。帰ってほしくないなら帰らないよ?
湊斗
...ずるい
風峰
え〜?
拓の顔は言葉と違い笑顔だった。俺の返事が分かっているんだろう。
風峰
どうしてほしい?
湊斗
帰って...ほしく、ない......
言い終わった後、顔の真ん中まで布団を被った。
風峰
うん。いいよ
頭を撫でる拓の手は優しくて温かくて気持ちいい。
湊斗
なぁ...
風峰
ん?
湊斗
拓が良かったら、さ...一緒に...寝よ?
風峰
ん!?
自分でも意識せずにそんな言葉を口に出していた。
風峰
えっ?まだ熱ある...?
湊斗
ちげぇよ!
本気で心配している顔をする拓に思わず言い返してしまった。俺の言葉に拓は目を見開く。
風峰
じゃあ、素で言ってる?
湊斗
うん
風峰
......はあああぁぁぁ
頭に手を当て、長い溜息をつかれる。
湊斗
なんだよ...
風峰
ずるいなぁって思って
湊斗
は?
風峰
素直で可愛いから
湊斗
...熱出てた時、言った...
風峰
素で言うのとは別だよ!
湊斗
〜っ!!
身を乗り出す拓。元々恥ずかしかったのもあり、頭まで布団を被った。
風峰
湊斗〜?
湊斗
素直だと悪いかよ...
静かになり、そっと目だけを布団から出すと
風峰
全然!?
そう言って、手を広げている。最後に少し音程が上がっていたが、少し迷ってから胸に飛び込んだ。
風峰
湊斗って甘えたがり?
湊斗
はぁ?なんで?
風峰
んー...ま、いいや
湊斗
気になるんだけど...
風峰
気にしない気にしない!
湊斗
んー...
拓の言葉に少し納得がいかなくて頭をぐりぐりと押し付ける。拓は笑いながら、頭を撫でてくれた。
湊斗
拓はよく撫でるよな。俺のこと
ベッドの中でも抱き締めている拓の顔を見上げて言う。拓は少し考えてから、
風峰
湊斗が可愛いからね☆
湊斗
ふーん...
風峰
あれ?甘えモード終わっちゃった?
湊斗
別に...
拓の胸に顔を埋めながら、1つ疑問をぶつけた。
湊斗
桃咲さんのこと...
風峰
萌香ちゃん?
湊斗
うん...。気持ちのこと知ってたのか?
記憶を探る様子を見せてから、あぁ...と頷く。
風峰
いや、あの時初めて知った
湊斗
ふーん...
風峰
嫉妬?
湊斗
うん
風峰
ふふっ。今日は素直だね〜
湊斗
...いつも素直だし。伝えてないだけだし
風峰
そう?
湊斗
そう
風峰
そっか。まぁ、でも萌香ちゃんのことは心配いらないよ
湊斗
なんで?
風峰
なんか利用してただけだって
湊斗
拓が利用...桃咲さんなら、やりそうだな
風峰
結構聞いた時はショックだったよ〜?嫌いってわけではないらしいけどさぁ
湊斗
ふーん...
風峰
...安心してよ。湊斗のこと手放す気ないし
湊斗
ん...
心の中では喜んでいるが、拓には伝えないことにした。
風峰
じゃあ、寝よっか
湊斗
うん...
拓の腕の中で規則正しく子供を寝かせるように背中を叩かれ、いつの間にか俺の意識は眠りの中に入っていた。
風峰
おやすみ。湊斗

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