その日は、御崎くん(?)に話しかけられて不機嫌になったこと以外、さほど変わりなく終わった。
いつもの時間に電車に乗り、自宅に帰る。
いつものようにご飯を食べ、お風呂に入り、数十分ほどめんどくさい勉強をして、布団に入った。
照明を暗くしてしまったせいでよく見えない。
手探りで枕元、布団の横などを探していく。
コツっと指先に何かが触れる。
電源ボタンを押すと、画面から放たれた光が部屋を照らした。
その光が眩しくて、思わず目を細めた。
画面の明るさを最小に設定し、Googleのアイコンをタップする。
ホームに表示されているニュースなどの記事を適当に選び読んでいく。
スマホを見ていようが見てなかろうが、自分の眠りが浅いことに変わりはないのでは?と思った。
それに、スマホの残りの充電を使い切りたい。
知るか、とばかりにその記事を閉じた。
脳内に入ってきたその情報を片隅へと追いやって、さらに他の記事を見ていく。
ふと目にとまった記事。
海の青々としたきれいな景色の写真が載っている。
なぜだか今朝から海だったり、電車だったりと妙に引っかかる。
その記事は見ずにスクロールする手を進めた。
たかが夢なんかに惑わされるなんて随分とバカになったな、なんて自分に呆れた。
なんだかモヤモヤとした感情が湧き上がってきた。
その感情を吐き出そうと、ゆっくりと深呼吸。
御崎くん(?)のことを考えたり、夕飯のことを考えたりしながら、ネットの記事を見漁っていく。
やがて、面白そうな記事もなくなり、ほどよく眠くなってきた。
ぼーっとしながら、布団を頭からかぶった。
ほんのりとした温かさがじわじわと広がっていく感じがした。
ふかふかとした布団たちに身を任せれば、体中の力が抜けていく。
気づけば、眠りについていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。