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耳元でアラームが鳴り響いていた。
耳が痛い。
バシッと乱暴に止めて再び布団に潜る。
勢い良く起き上がり、ベッドから出る。
脱いだパジャマを放り投げ、制服に着替える。
布団も何も直さずにリビングへダッシュで駆け降りた。
お母さんは少し呆れた顔をしつつも、お弁当を手渡してくれた。
運動不足で鈍った足を必死に動かす。
なんとか電車に間に合った。
遅くまで起きてたせいで電車の時間に間に合わないかと思った。
どくどくと早鐘を打つような鼓動を落ち着かせようと深呼吸。
しばらく続けていたら、呼吸はいつも通りに戻った。
少し乱れた髪の毛先をつまんだり、引っ張ったりする。
電車の中は冷房がきいていて、走ったせいでだらだらと出てくる汗を消していった。
体温が少し下がり、心地が良くなってくる。
まだ睡眠時間が足りないのか、脳が起きてないのかは分からないが、意識が薄れてきた。
ダメだ、電車の中で寝てしまうと降りる駅についても起きられない気がする。
耳元でアラームが鳴っていようがすぐ起きないこの体質は良くも悪くも影響している。
はぁ…と軽くため息をついて座席の背もたれに寄りかかる。
頭の中は、また見た夢のことでいっぱいだった。
黒か青か分からないくらいに汚れたような海の光景が浮かんでいた。
軽く身震いしたようだった。
放課後、なんとなく考え事をしていたら、横から話しかけられた。
意味が分からず首を傾ける。
いや、バリバリ元気の絶好調ですけど何か…
確かに悩んでることはあるけれども。
こんなの話すだけ無駄だ。バカみたいなんて言われるだけだ。
悪いことをしてるわけでもないのに、なぜか心臓がバクバクしてうるさい。
御崎くんは自分が相談しようか迷っている様子を察したのか、続けて言う。
必死に否定する言葉を探したが、うまく出てこない。
なんと言ったらいいのだろうか。
相手が誰でも言いにくい、なんて言ったら怪しまれるだろうか?
うつむいていた顔を上げ、御崎くんの顔を見ると、しょんぼりとしている。
目が合うと、無理して笑顔を作ったのが分かった。
また、何人かの女の子達に見られていたが、その子も帰ったようだ。
あー、もう、なんでもいい、どうにでもなれ。
変なやつだと思われたら、それはそれでいい。
パッと顔を明るくさせた御崎くんは、私の前の席に座った。
話すことに決めたのは、どこかで「誰かに聞いてほしい、助けてほしい」と思っていたからかもしれない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。