第9話

no.8
168
2022/02/23 07:25


〜〜♪〜〜〜〜♪
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
んむ…っるさい

耳元でアラームが鳴り響いていた。

 
耳が痛い。



バシッと乱暴に止めて再び布団に潜る。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
(朝…いつの間にか寝たのか)
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
…………!

勢い良く起き上がり、ベッドから出る。


脱いだパジャマを放り投げ、制服に着替える。


布団も何も直さずにリビングへダッシュで駆け降りた。
お母さん
せなー?やっと起きたのね。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
あー、ごめん、朝ごはんいらん…!
お母さん
ん、そう。

お母さんは少し呆れた顔をしつつも、お弁当を手渡してくれた。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
ありがとー!行ってくる!

運動不足で鈍った足を必死に動かす。


なんとか電車に間に合った。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
(あーーーーーーーーっぶな)

遅くまで起きてたせいで電車の時間に間に合わないかと思った。

どくどくと早鐘を打つような鼓動を落ち着かせようと深呼吸。


しばらく続けていたら、呼吸はいつも通りに戻った。


少し乱れた髪の毛先をつまんだり、引っ張ったりする。


電車の中は冷房がきいていて、走ったせいでだらだらと出てくる汗を消していった。


体温が少し下がり、心地が良くなってくる。

まだ睡眠時間が足りないのか、脳が起きてないのかは分からないが、意識が薄れてきた。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
むっ…

ダメだ、電車の中で寝てしまうと降りる駅についても起きられない気がする。  



耳元でアラームが鳴っていようがすぐ起きないこの体質は良くも悪くも影響している。



はぁ…と軽くため息をついて座席の背もたれに寄りかかる。




頭の中は、また見た夢のことでいっぱいだった。


黒か青か分からないくらいに汚れたような海の光景が浮かんでいた。




軽く身震いしたようだった。




御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
相川さーん
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
……え?
放課後、なんとなく考え事をしていたら、横から話しかけられた。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
相川さん、大丈夫?
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
……?なんで?
意味が分からず首を傾ける。


いや、バリバリ元気の絶好調ですけど何か…
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
顔しかめてたし、ずっと考え事してるみたいだったから。どうしたのかな、と。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
なるほど。そういう事か。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
それで、大丈夫?なんか悩みでもあるの?

確かに悩んでることはあるけれども。


こんなの話すだけ無駄だ。バカみたいなんて言われるだけだ。



悪いことをしてるわけでもないのに、なぜか心臓がバクバクしてうるさい。



御崎くんは自分が相談しようか迷っている様子を察したのか、続けて言う。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
あー…やっぱ、最近話せるようになった人に相談なんて難しいよな、ごめん。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
あ、いや、えっと、そうじゃなくてね…あのー…

必死に否定する言葉を探したが、うまく出てこない。



なんと言ったらいいのだろうか。


相手が誰でも言いにくい、なんて言ったら怪しまれるだろうか?


うつむいていた顔を上げ、御崎くんの顔を見ると、しょんぼりとしている。


目が合うと、無理して笑顔を作ったのが分かった。


また、何人かの女の子達に見られていたが、その子も帰ったようだ。


あー、もう、なんでもいい、どうにでもなれ。


変なやつだと思われたら、それはそれでいい。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
じゃあ、ちょっと聞いてもらってもいい?
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
…!あぁ、もちろん。
パッと顔を明るくさせた御崎くんは、私の前の席に座った。


話すことに決めたのは、どこかで「誰かに聞いてほしい、助けてほしい」と思っていたからかもしれない。

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