御崎くんに、今までの夢を話した。
電車が落ちたこと、海が日に日に黒くなっていたこと。
話しているとき、少しでも気を抜けば泣いてしまいそうで、弱音を吐いてしまいそうだった。
他人に弱いところなど見せられない。絶対、見せたくない。
だから、あまり気にしていないような素振りで話した。
話す途中、やはり何人かのクラスメイトに見られていた。
まぁ、全員帰っちゃってまた二人になった。
夢の流れを大体打ち明けた。
ただ、その時の自分の感情は伝えなかった。
伝えたく、なかった。
御崎くんは顎に手を当て、分かりやすく考え始めた。
別に、他人の夢なんてそんな深く考えることじゃなくないか?
……なんて思ったが、一生懸命、考えてくれているので黙る。
選択…と小さく呟く。
だが、近くにいた御崎くんには聞こえていたようだ。
基本的に選択で悩むことが少ない自分に、そんなことがあるのだろうか?
ファミレスとかでメニューを選べと言われたら、1分もなしで決めるような人間だもの。
夢ってだけあって、風も感じなかったし、落ちる浮遊感もなかった。
今考えれば、電車のドアが開いたわけでもないのに海に落下していた。
夢っていきなり場所が変わったり、あるはずないものが出てきたりとすごいなぁ。
驚いて思わず「えっ、あるの?」と声が出る。
御崎くんはおかしそうに笑って、「あるよ」と言った。
こんなにあるならネットで検索しちゃえば良かったと今更後悔。
御崎くんに相談してしまったものは仕方がないけれども。
眉を下げて、困ったような表情を浮かべている御崎くん。
え……自分、何かしました…?
戸惑いを隠せない様子の御崎くんを横目に、目の前に差し出されたスマホを受け取り、画面を覗いた。
そこには、「海に落ちる夢の意味を本物の夢占い師〇〇が徹底解説!」というような見出しとともに、ズラリと並べられた文字がある。
徹底解説というだけあって、かなり細かく書いてあるようだった。
そっか、とだけ呟き、視線をそらす御崎くん。
え、ほんとになに…
御崎くんに促されるままに、視線をスマホの画面へ落とした。
所々、読む必要がなさそうだったので飛ばした。
だんだんと下へスクロールしていく。
ふと、その手が止まる。
なぜ御崎くんが戸惑っていたのか、ようやく理解できた。
海に落ちる夢→運気の低下、失敗、絶望など
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。