第10話

no.9
133
2022/02/23 07:26

御崎くんに、今までの夢を話した。



電車が落ちたこと、海が日に日に黒くなっていたこと。


話しているとき、少しでも気を抜けば泣いてしまいそうで、弱音を吐いてしまいそうだった。


他人に弱いところなど見せられない。絶対、見せたくない。


だから、あまり気にしていないような素振りで話した。



話す途中、やはり何人かのクラスメイトに見られていた。


まぁ、全員帰っちゃってまた二人になった。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
んー、まぁ、ざっとこんな感じ、です。
夢の流れを大体打ち明けた。


ただ、その時の自分の感情は伝えなかった。 

伝えたく、なかった。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
んー…
御崎くんは顎に手を当て、分かりやすく考え始めた。


別に、他人の夢なんてそんな深く考えることじゃなくないか?


……なんて思ったが、一生懸命、考えてくれているので黙る。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
電車…かぁ…
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
…?電車が、なんかあるの?
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
んーと、電車の夢の意味、みたいなのがあってね。
なんか、人生の進路とか、選択を変える的な意味らしい。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
意味…?そんなのあるんだ。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
あるらしいけど、本当かどうかはその人の感じ方次第じゃないかな。

選択…と小さく呟く。


だが、近くにいた御崎くんには聞こえていたようだ。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
なにか、迷ってたりする?
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
んー…思いあたる節がないかなぁ
基本的に選択で悩むことが少ない自分に、そんなことがあるのだろうか?


ファミレスとかでメニューを選べと言われたら、1分もなしで決めるような人間だもの。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
そっか。んー、じゃあ、海の話に移ろう。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
ん。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
海に、落ちたんだよな?
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
うん、落ちてた。
夢ってだけあって、風も感じなかったし、落ちる浮遊感もなかった。


今考えれば、電車のドアが開いたわけでもないのに海に落下していた。


夢っていきなり場所が変わったり、あるはずないものが出てきたりとすごいなぁ。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
うーん、検索したほうが速そうだな
驚いて思わず「えっ、あるの?」と声が出る。


御崎くんはおかしそうに笑って、「あるよ」と言った。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
ほら、出てきた。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
へぇ、思った以上にあるな。
こんなにあるならネットで検索しちゃえば良かったと今更後悔。


御崎くんに相談してしまったものは仕方がないけれども。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
…………。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
どうしたの?
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
あ、あぁ、いや、うーん

眉を下げて、困ったような表情を浮かべている御崎くん。



え……自分、何かしました…?
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
あの…?なんか、うん、ごめん…?
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
あ、違くて、とりあえず、これ見てみて。

戸惑いを隠せない様子の御崎くんを横目に、目の前に差し出されたスマホを受け取り、画面を覗いた。


そこには、「海に落ちる夢の意味を本物の夢占い師〇〇が徹底解説!」というような見出しとともに、ズラリと並べられた文字がある。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
……。

徹底解説というだけあって、かなり細かく書いてあるようだった。
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
海、黒っぽくなってたんだよね…?
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
ん?うん、そうだね。
そっか、とだけ呟き、視線をそらす御崎くん。


え、ほんとになに…
御崎蓮(みさき れん)
御崎蓮(みさき れん)
まぁ、続き読んでみて。
御崎くんに促されるままに、視線をスマホの画面へ落とした。 


所々、読む必要がなさそうだったので飛ばした。



だんだんと下へスクロールしていく。




ふと、その手が止まる。
相川星奈(あいかわ せな)
相川星奈(あいかわ せな)
あぁ…

なぜ御崎くんが戸惑っていたのか、ようやく理解できた。






海に落ちる夢→運気の低下、失敗、絶望など

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