姉ちゃんと道を別れてから数分が立った。
家で見たあの時計は、時間がズレてて遅刻なんてする時間じゃなかった。
それは公園にある時計で気づいた。
きっと姉ちゃんも気づいたんだろう。
……また、1人…
そう思ってたけど、今日は違った。
背中をバンッと叩いて満面の笑みを浮かべるのは、奏でくんの次に僕に話しかけてきてくれた女の子。
凛だった。
凛と出会ったのは偶然だった。
いや…そんなふうに簡単な言葉で表したら怒られるかな。
……凛は僕を救ってくれた。
僕は下校時に男子に荷物係として連れられていた。
僕はそれほど力がなく、フラフラとしていた。
その時、ある1人のカバンを落としてしまった。
その途端、カバンを落とされた人は僕に殴りかかってきた。
何俺のモノ落としてんだ。……って。
そんなに大切なら自分で持てばいいじゃないか。
そんなこと言えるはずなかった。
僕は臆病だったから…卑怯だったから……
そんな時、たまたまその道を通りかかった彼女…凛が僕を救ってくれた。
あの時の凛……かっこよかった。
凛は、僕の発言に不満があったのか、頬を膨らませている。
…そんな顔されても……
姉ちゃんにも…
謝ってばかりじゃダメだって……
言われたことがある。
凛…姉ちゃんに似てるのかな…
そう言って凛は、僕の手を取り走り出す。
普通…立場逆なんじゃ…?
そんなことを思いながら僕らは走って学校へと向かった。
息切れをしながらも、
「ギリギリセーフ~!」などと言ってる凛を見ながら席につく。
ほんと…疲れた……
意外と凛は体力あって…
いや、大体は想像出来てたけどね……
僕と奏と凛。
この3人はとても仲が良い。
たまに一緒に公園に遊びに行ったり……
勉強会をしたり。
喧嘩は…たまにするけど、すぐに仲直りする。
2人に出会うまでは、これが夢の生活だった。
けど今は、その夢の生活が実現してる。
全部2人のおかげだ。
姉ちゃんは……どうなの、かな…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。