第4話

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2018/05/04 22:31
その後、私は詠太によって顔に大きなアザを残した。
けど、それを私は恨んでもないし怒ってない。
だって詠太は…自分の命を優先してくれたから。
私なんかの事より。

いや…それは違うかな…

あとから聞くと、選択肢はもうひとつあったらしく、私をいじめるのをやめ、詠太がいじめられる。
だが、それをしても涼也は絶対に私をいじめてくる。
それは目に見えていた。
だから詠太は、私を痛めつける。という選択肢にしたんだと思う。

詠太は、私の顔を殴ってる時…とても悲しい顔をしていた。
今にも泣きそうな顔…

私は抵抗しなかった。
だって、早く終わらせてあげたかった…
これ以上、詠太の心を傷つけたくなかった。
星華
星華
あんた…ほんと卑怯者ね…
涼也
涼也
えー?なにが?w
そして…またあの時と同じ光景が今。
広がっている。
…あの夏の日から私は何度も前と同じことをされてきた。
何も、変わっていない。
星華
星華
あんたは…詠太との約束をやぶった。
涼也
涼也
約束ー?
そんなのしたっけ?w
詠太との約束。

詠太が私に傷を負わせれば、二度と私をいじめない。
けどこいつは…詠太とのその約束をやぶった。
星華
星華
あんたは何度詠太をッ…!
涼也
涼也
君を痛めつけるのは肉体じゃない。
星華
星華
はっ…?
涼也
涼也
中身。だよ。
詠太
詠太
……姉ちゃん…ごめんなさい。
けど、許して…
星華
星華
…なに、言ってるの?
詠太
詠太
…僕がこれから…姉ちゃんの代わりになるから…
その時の詠太は…笑っていた。
詠太の笑顔は本物だった。
なんで…笑ってるのっ…
星華
星華
ダメだよ詠太…
なんでそんなこと…!
詠太
詠太
姉ちゃんは僕がやりたいことをやれって言った…!
詠太
詠太
……悲しくても…苦してくても。
笑っていなさいって…
笑ってれば大丈夫って…言ってた(微笑
星華
星華
えい、た…
それは、違うんだよっ…
違う。それをちゃんと伝えなきゃいけないのに、私の喉から出てくる声はカスカスで…頼りなく細くて…

詠太には届かなかった。

私が呆然としてる間に涼也が詠太を連れていこうとしてしまう…

まって…やだ…ダメだよ、。
詠太はダメ…絶対にっ…ねぇ…
奏
…カサッ))
涼也
涼也
……誰?
奏
ひっ…
ある1人の男の子が、木の後ろに隠れていたらしく、音を出してしまい正直に前に出てくる。

誰だろうか…?
身長は詠太と同じくらいの大きさ。
顔立ちは…中学生、くらい?
奏
え、詠太からッ…手を離せ…!
星華
星華
………
あぁ…詠太の友達かな…

けど、詠太の友達はいつも、この子みたいな行動をしてきた。
その行動は言葉を告げるだけ。
今までの子はみんな、言葉を告終わると、ビビってすぐに去っていってしまった。

きっとこの子も__
詠太
詠太
奏…ダメだよっ…
来ないで…!
奏
ダメじゃない!
僕、君に何度も救われてきた…!
詠太
詠太
っ…けど…ダメだよ、。
奏
今君を救えるのは…
僕だけだっ…!
…私だって救える。
なんて言えるはずがない。
だって今…涼也に怯えて足が全く動かないんだもん。

……ほんと、情けない。
涼也
涼也
君、この子の道連れになるー?w
それが嫌なら…すぐにここからいなくなって。
奏
いなくなるわけ…ないだろ…!
星華
星華
ッ……!
詠太の友達の男の子は…
涼也に襲いかかった。

襲いかかったと同時に、男の子はあらかじめ持っていたのか、カッターで涼也の手を切りつけた。

すると涼也の手の力は緩み詠太から手を離す。
その瞬間を狙って、男の子は詠太の手をしっかりと握る。

あぁ…かっこいい…
涼也
涼也
いったいなぁ…!!
奏
ね、姉さんも早くいこっ…!
星華
星華
え、う…うん!
詠太
詠太
………
手から血が出ている涼也を尻目に、私たちは全力で走った。

男の子は…詠太の手をしっかりと握っている。

……その姿を見て、安心してしまった。

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