第144話
承政院の私が王妃にならなかった話
百済の錦秋王___ジミンさんに解放され、
ようやく新羅に戻ってきた。
医務室で手当てしてもらい、
久々にテヒョンアと話して、
これからどうこの城を修復するか考えていた時に。
乱暴に扉を開けて入ってきたのは、
相変わらず神経質な暗行御史で。
そこからいつも通り長い長い愚痴を聞くことになる。
だが長らく百済で人質となっていた私は
それすら何だか懐かしかった。
ひと段落ついてホソクは
ため息と共に懐から白い布を取り出す。
その布を広げれば、中には華やかな簪が。
困惑したままそう聞くと
ホソクは拍子抜けしたように言う。
何なんだこのド屑は…………!
バツが悪そうに顔を背けて
彼は言葉を続ける。
その言葉を理解するのに、数秒かかった。
私の手から簪を取って
器用に髪を纏めてくれるホソク。
一人状況を飲み込めずにいると
彼はあの、鼻につく笑い方をして。
ふわりとホソクの香りが近付き、
その瞬間、何よりも優しい感触が
私の唇を塞いだ。
***
ぜひ104話と読み比べてみてください。