第145話
🍀
初めてだ、
この暗行御史に優しい接吻をされたのは。
すぐに離れていった彼の顔は、穏やかで綺麗だった。
何も言葉が出てこなくて、
おろおろと目線を迷わせる。
するとそれを見兼ねたホソクに
ぎゅっと抱き締められて。
王宮に来たばかりで、何もかもが不安で、
そんなとき同室になった男は最低な奴だったけど
でも慰めてくれるのも彼だった。
陰口を言われた時も、
オラボニが処刑されそうだった時も。
たまに嫌いだ、この人は屑だから。
でも好きだ、きっと似た者同士だから。
涙と共に、飲み込んでいた思いが流れ出て。
心の端にはテヒョンアやユンギ様の影もある。
百済で助け出してくれたとき、
あの一騎打ちはユンギ様が輝いて見えた。
けれど王宮に帰ってきて、
この暗行御史の顔を見たことが
何よりも心を落ち着かせた。
私に必要なのはきっと、そういう人だ。
その言葉に何度も頷いて、
再び甘く唇を重ねた。