あなたの居る部屋へ向かう途中も
立ちくらみが酷かった。
手足が痺れ、何度も壁にもたれかかって。
だが、こんなことをしている場合ではない。
死んでしまう…彼奴が…っ
勢い任せに扉を開けると
すぐ目に飛び込んできたのは、
寝台から落ちてぐったりしている彼女。
血を吐くのも構わずに彼女を抱き起こすと
苦しそうに息をしていて。
口の端から血が垂れ、
虚ろな瞳からは涙が溢れている。
あなたは我の服を一生懸命に掴んで言った。
そう答えようとしても
自分も毒が体内に回った身。
同じように血を吐き出してしまう。
…あなたを幸せにしようと
ずっとそれだけを考えてきたのに。
全て裏目に出てしまった。
体中から力が抜けて
もう何もできない。
気力でなんとか彼女を抱き締め、慰めた。
それでも彼女の目線は
我を捉えることができない。
先程まで しがみ付いて きていた力が無くなって
彼女の腕がだらんと落ちた。
もう閉じてしまった彼女の目は
我の顔を覚えているのだろうか。
また
約束を破ってしまって。
赤い血が垂れる彼女の唇に
そっと自分のものを重ねた。
あなたの呼吸が止まってから
自分の意識がなくなるまで
そう時間はかからなかった。
自分の目の前に広がる光景が
信じられない。
抱き合ったまま目を瞑っている2人の
周囲は血だらけで。
信じたくはなかったが
亡くなっているのは明白だった。