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そして、昼休み。
お弁当を一緒に食べようって、菜々子ちゃんを誘ってみよう……!
席を立って、菜々子ちゃんの方へ駆け寄ろうとしたところ──気が急いていたからだろうか、途中の椅子に躓いてバランスを崩してしまった。
倒れる……っ!
ひやっとした次の瞬間、ぐっと二の腕を摑まれ、誰かに支えられた。
少しだけかすれた、まだ声変わり前の男子の声が耳元で聞こえて、一瞬鼓動が不規則に飛び跳ねる。
野田君!?
お礼を告げると、野田君は口元をほころばせたけど、すぐに真面目な顔になった。
それだけ言うと、私の腕を摑んだまま、歩き出す。
え? え? ええ?
突然なに? てかクラスのみんながめっちゃ見てるんだけど……!
私は混乱したまま、無言の野田君に引きずられるように教室を後にした。
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連れてこられた先は、人気のない屋上だった。
野田君は私の腕から手を離すと、真剣そのものの表情で私に向き合った。
心臓がいつになくドキドキと高鳴っている。
さっぱりわけがわからないけど、もしかしてこの状況って……告白?
──「もしかして、一目惚れされちゃったとか?」
菜々子ちゃんの声が蘇り、いやいやまさかと心の中で否定する。
……でも、好みは人それぞれっていうし……。
息をのんで立ちすくむ私を、熱を帯びた眼差しでまっすぐに見つめながら、野田君はとうとう口を開いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。