第6話

姫にはスーツがお似合い?
4,022
2023/01/14 06:01
駿佑side

お父様から急にあんな事を言われた後、俺は謙杜を自分の部屋に連れ出した。

謙¦あ、あの、、2人きりで住むっていうのは、、決定、なのですか、?

駿¦多分そうやろうな

曖昧な返事に不満なのか、唇を尖らせて睨んでいる。

謙¦急にそんな事、、

駿¦急?知り合って数分で駿くんって呼んできた人は誰やっけ?

謙¦・・・あ、あれは忘れてください!///

駿¦えー無理。可愛かったもん。それに一生いじれるし笑

謙¦そんなに長く一緒にいるつもりは、! 大体何故私が?いつから一緒に住むのですか?

駿¦なぜってそこにいたから。いつからかは聞いてへんなぁー

謙¦ではお願いしてもよろしいですか?しばらくこのお家で使用人として働かせてください。一緒に住むのはそれからにして頂けませんか?

駿¦確かにそれもそうやな笑 分かった。じゃあ1週間ね。それが終わったらこっちに来て。

謙¦でも僕他の方に何て言えば、、

駿¦それは俺から何とかしとくから。よろしく。

謙¦は、はい、

謙杜side

何とか、というふわっとした解答に戸惑いを感じながらも駿佑様から借りたスーツを脱いで制服に着替えた。

初めてスーツというものを着たけど、なんか凄く、、暑苦しい

大人の圧っていうか、とてつもなく大きな何かに縛られているような気がする。

この人はずっとこれを着て生きてきたのか

見たところそんなに年が離れているとも思えないし、、

この人は普通の人より先に大人になったんだろうな

普通の人より子供でいる時間が短くて

家の道具であった時間が長い

そして同時に、周りからの圧や期待に耐えた時間も。

今にも潰れてしまいそうなほど細い身体でずっとそれに応えてきたのだろうか。

ずっと何かの呪縛に囚われ続けたのだろうか。

駿¦着替えられた?

謙¦はい

駿¦そっか。じゃあ戻って。

謙¦あ、あの、、

駿¦・・・なに?

謙¦ありがとうございます

駿¦なにが?

謙¦ずっと一緒にいたいって言ってくれて。

駿¦いやあれは、、

謙¦お芝居だとしても、嬉しかったんです。

駿¦っ、、

謙¦相手にされて嬉しいと思った事にはありがとうと言いなさいって昔父から教わったので。

駿¦・・・いいお父様だな、羨ましい

謙¦そうですか?私は駿佑様の事も駿佑様のお父様の事も羨ましいですよ?

駿¦それはどうも。

謙¦本心ですよ?僕も駿佑様みたいに優しくて謙虚で周りを見れる人になりたかったなぁと思います。

駿¦へ、?

謙¦それにお父様も。お忙しいのに息子さんの意見を尊重しようと考えておられて、、素敵な親子だなと思います。

駿¦・・・そうかな、笑

謙¦はい。僕は駿佑様のようにスーツを着た事なんて一度もありませんし、駿佑様の存在もどんな人なのかもさっき知りました。

謙¦だから駿佑様が今までどんな風に人生を過ごして来たかなんて僕には到底理解できないけど、貴方の優しさとスーツの暑苦しさだけは分かりました。

駿¦え、?笑

謙¦僕が駿佑様の事を知らないと言って失礼な事を聞いてしまっても、怒らずに笑って流してくれたり。そういう所が優しいなと思いました。

駿¦それはええねんけど、、スーツの暑苦しさって何?サイズの問題?

謙¦いえ、スーツには独特の圧があると思うんです。ちゃんとしないといけないっていう荷の重さというか、暑苦しさというか。それに耐えてきた駿佑様は本当に素晴らしいんだなって。

全て言い終えた後、彼の頬が少し紅くなっているのが見えた気がした。

駿佑side

嬉しかった。初めて会った時からなんとなく他の人と違う感覚がしていたけど、謙杜は俺の外見ではなく内面だけを褒めてくれた。

諦めて政略結婚でもしようかと最近思い始めていたものの、最後の最後に神様が味方してくれたような気がした

謙杜の艶っぽい瞳が今俺だけを捉えていると思うと、なんだか凄く嬉しい。

駿¦・・・大分謎な話やな、笑

謙¦そうですか?笑

駿¦うん。でもその、、

謙¦??

駿¦・・・あ、ありがとう、、

謙¦ふふ笑 どういたしまして!

駿¦でも謙杜、スーツ似合ってたで?

謙¦へ?

駿¦さすが、俺のお姫様やわ笑

謙¦・・・僕は男です、!///

駿¦そやけど俺の姫には変わりないやろ?婚約してんから!

謙¦でもお姫様がスーツを着るなんて初めて聞きましたし、、

駿¦じゃあ俺らが初めてになればええやん!

謙¦・・・!? もういいです!失礼しました!///

恥ずかしいのか顔を真っ赤にさせたままスーツを握りしめて部屋を出ていってしまった。

駿¦・・・ふふ笑 楽しみやなー、笑

誰もいない部屋に自分の独特な笑い声が響く

さっき会ったばかりなのにもう謙杜に会いたくて。

そう思うと一週間は長すぎたかもしれない

俺は机に置いてあるカレンダーとにらめっこしながら、どんどん迫ってくる約束の日を楽しみに一週間を過ごした

プリ小説オーディオドラマ