第9話

洞窟
15
2018/08/15 07:00
雨と雷がダンスしてる中、輝天萌は背中越しに蒼凰の温もりを感じながら外を見ていた。
輝天萌
―止まないね...
蒼凰
...そうだな。
輝天萌
――蒼凰、こういう事してその...恋人、とかに怒られない?
蒼凰
え?
輝天萌
あっ!ごめん!
その、なんか彼女さんに悪いなーって...
グルグルと輝天萌の心に黒い渦が纏(まと)う。
蒼凰
――彼女とかいないよ。
蒼凰
...そういう輝天萌こそ、彼氏とかは?いたりするの?
蒼凰の腕が少し力がこもった。
輝天萌
いないよ?ずっと独迷子だったから...
蒼凰
...そっか。なんかごめん...。
輝天萌
ううん!私こそごめんね!
変な事聞いちゃって...。
輝天萌の中に渦巻いていた闇が光が差し込んだ。
輝天萌
(...嫌だな、私。
これじゃあ蒼凰に"恋"してる。)
恋だと知ってしまった輝天萌は、膝を強く抱えた。
誰かを好きになって、自分が知らない姿を見て嫉妬して己の欲を吐き出し、振り回して――

恋というのは厄介な毒だ。
輝天萌
――まだ知りたくなかったなぁ...
蒼凰
ん?
なんか言った?
輝天萌
ううん。
なんでもないよ。
輝天萌は蒼凰に身を託し、眠りへと堕ちた―

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