第8話

人間とうそ
47
2020/08/21 09:24
『人間』は、アルトのほうにまっすぐ歩いてきた。
ストラ
ストラ
…ねぇ、ポプラの木さん
ストラ
ストラ
アルト、大丈夫かな…
気づかれないように、小さな声でポプラの木さんに聞いた。
ポプラの木
大丈夫。
ポプラの木
…アルトは、人間たちの仲間っていうことになってるはずだから。
ポプラの木さんの声は人間には分からないから、ふつうにしゃべっても大丈夫。
ストラ
ストラ
そっか。
アルトと『人間』が、何かはなしている。
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人間
アルト、こっちの方はどうだ?
アルト
お疲れ様です、ガーノさん。
アルト
…俺もまだ全く。
アルトがうそをついてる。

やっぱり、『人間』たちがわたしをさがしているのは本当みたい。
アルト
見たところ、この辺りにはいないようです。
アルト
あぁ、それと――――
人間
――? 何か分かったのか?
アルトは、ちょっと間をおいてから、言った。
アルト
「異人種」の外見についてなんですが、
アルト
――2mを超えるような大男で、髪は緑色、だそうですよ。




わたしと、全然ちがう。
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side:ポプラの木


『――2mを超えるような大男で、髪は緑色、だそうですよ。』
ポプラの木
なるほどな…。
アルトの嘘は、とても考え抜かれたものだった。


ストラの外見と真逆、というだけではなく、「大男」とすることで、捜索隊の目線を必然的に上に向けさせている。


ストラは身長が低いため、見つかる確率は格段に下がる。


また、髪色の緑も、俺を含め森の木々と同色だから、そう簡単に見つけることは出来ない。
捜索隊は、緑髪を見つけるために血眼になって探すだろう。
ポプラの木
……『アルト』…
どこかで、その名前を聞いたことがある気がする。




俺は木だから、根を張ったこの場所から動くことは出来ない。

知っていることはこの森で起きた事と、たまに鳥たちが運んでくる外の世界の僅かな情報だけだ。

俺の記憶にあるということは、そのどちらかにアルトが関係したということ。




でも、それがストラや俺たちに危険を及ぼすことはない、と直感している。

これからストラと旅をするには、おそらく、問題ない。

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