第4話

走る。
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2019/06/22 03:27
ストラ
ストラ
はあっ、はあっ
ただひたすら走る、走る。

けもの道を、木々の合間を、藪や茂みを、ただ走る。

こんなに苦しいの、生まれてはじめてだよ…。
ナラの木
ストラ!俺を通り過ぎて右だ!
ナラの木
そこをまっすぐ、クヌギの木まで行くんだ!
ストラ
ストラ
ねぇ…ナラの木さん…、どうして…わたし…っはぁっ…
ナラの木
いいから、ストラは逃げるんだ!
ナラの木
今はゆっくり話してはいられないんだ。ごめん…。
ストラ
ストラ
なんで…あやまるの?
ストラ
ストラ
ねぇ、また、会えるよね?
ナラの木
ああ。きっとまた後で会おう。
ナラの木
だから、ストラは頑張って、生きろよ?
ストラ
ストラ
うん!
ストラ
ストラ
じゃあ、またねっ…!
また、走り出す。

ナラの木さんを通り過ぎ、右。そのまままっすぐ。クヌギの木さんまで…
ストラ
ストラ
きゃっ!
痛ったぁ…
足がもつれて転んじゃった…。
その時、
人間
あっちに行ったぞ!
聞いたことの無い人の声。

…こわい…こわいよ…
ナラの木
くっ、…行かせる、かっ!
ナラの木さんの声がして振り返る。

――でも、振り返らなかった方が良かったのかもしれない。
ナラの木
――っあぁ!
ナラの木さんは、自分の枝を切り落として人間の行く手を阻んだ。

だけど、
人間
こいつ、邪魔だ。
そう言って、人間は、大きな斧を取り出して―――
ストラ
ストラ
もう、いやだぁ…!
背を向けて、逃げ出す。

もう、つらいよ…。
ストラ
ストラ
うぅ…やだよ…
ただ前へ、前へ!
クヌギの木
ストラちゃん!こっちよ!
ストラ
ストラ
うぁ…クヌギの木さん…!ナラの木さんがぁ…!
クヌギの木
いいから!ストラちゃんは逃げて!
クヌギの木
きっと、大丈夫だから、ね?
ストラ
ストラ
…ほんとに?
ストラ
ストラ
…みんなと、またお話できる?
クヌギの木
うん。
クヌギの木
ストラは、いい子だから、今は逃げて?
ストラ
ストラ
…わかった。またあとでね!
クヌギの木
私をまっすぐ行ってポプラの木まで行って!
ストラ
ストラ
うん!
クヌギの木さんが、大丈夫って言ったから、きっと大丈夫。
きっと、そうだよね?

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